[コメント] ザ・ミッション 非情の掟(2000/香港)
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
『レザボア・ドッグス』は冗漫だ。『ワイルドバンチ』はウェット過ぎる。『男たちの挽歌』はなんて泥臭いのか。
この映画に比べれば。
ドライでハードでクールでタイトでスタイリッシュで熱い。その上チャーミング。
『ザ・ミッション』は、そんな賛辞の言葉すら鼻で嗤うかのようだ。この映画は言葉以上に、その言葉が表す概念そのものなのだ。
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『ザ・ミッション』は寡黙な映画である。ちょっとした仕草、何気ない会話、目線、たたずまい、息遣い。そういったもので(言葉に頼りきることなく)人間性や関係性を描き切っている。
『ザ・ミッション』は無駄のない映画である。87分。この短い時間に必要なことだけがパズルのピースのように嵌め込まれている。
『ザ・ミッション』は遊びの効いた映画である。煙草を使った悪戯、紙屑のサッカー、そこに浮かび上がる男たちの「情」という「甘さ」。そしてその「甘さ」こそがラストにおいて急激に昇り詰める緊張の一瞬の呼び水となるという見事さ。
『ザ・ミッション』という映画は、斯様に優れた娯楽映画の条件を見事に兼ね備えており、それは『鎗火』という原題のイメージと重なり合って、私に精巧な造りの一丁の拳銃を思い起こさせる。
拳銃が、あくまでも武器としての実利を備えながら、またそうであるからこそ官能的であるのと同様に、『ザ・ミッション』があくまでも娯楽作品としてまさに「1コマの無駄もなく」完璧であるその在り様こそは、黒光りする鋼の塊のごとく美しく、真に「映画芸術」と呼ぶにふさわしい。
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