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[コメント] 思い出のマーニー(2014/日)

都市伝説を生まないシンプルで美しい物語。
ALOHA

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







祖母が私を呼び止めたのはいつの事だったろう?

「私が死んだら、お棺の中にあれを入れておくれ」

指したその指の先には人形がぶら下がっていた。 祖母が自分の通った学校のバザーで購入した学校の制服を着た人形だった。

数年後、祖母は亡くなった。 祖母の言葉を思い出した私は、祖母の部屋に人形を取りに行った。透明のビニール袋には人形と一緒に手紙が入っていた。その手紙は学生時代の友人とのやり取りだった。

英語を受け持った厳しい外国人の先生のこと。袴に編み上げブーツ姿で蹴まり遊びをしたこと。手紙は大正時代を過ごした女学生の楽しい思い出で溢れていた。

祖母は卒業後、関東大震災、東京大空襲と、子供を抱え、夫を支え苦労の時代を過ごすことになる。 親父の兄弟たちによれば、苦しいながらも楽しい我が家だったとの事だが、祖母は厳しい人で、学生時代の楽しい思い出話しなど聞いたことはなかったと言う。苦労させている子供たちの前で、その話しは死ぬまで封印されていたのだ。

この映画の主人公杏奈が小さい頃、マーニーそっくりの人形を抱えているシーンが出てくる。私の祖母同様、マーニー(杏奈の祖母)もまた、楽しい思い出をその人形に託し、孫の杏奈に人形を授けたのに違いない。

杏奈に明るい表情が戻るのは、マーニーに出会い、マーニーとの愛を感じてからだ。 それまでの杏奈は自分がこの世で不要な存在なのではないか。と落ち込んでいた。 愛された。という記憶を失っていたからだ。

湿っ地屋敷を見たことで、心の奥深くにしまわれ、眠っていた記憶が呼び起こされた。 杏奈に注がれた深い愛情の記憶。それが彼女の妄想となってよみがえり、追体験させていく。

杏奈のマーニーとの体験は、マーニーが幼い杏奈に何度も聞かせた、久子、和彦との楽しい思い出話しだ。

これは、杏奈だけの話しではない。 誰もみな、たくさんの愛情を注がれて育ってきた。

孤独を感じたら、心の奥にしまい込んだマーニーの記憶を探してみよう。 それが、私たちにとっての「思い出のマーニー」なのだ。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)Orpheus ぱーこ[*]

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