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[コメント] ゴッドファーザーPARTIII(1990/米)

思い込みと思い入れ。しかもビデオ鑑賞・・リアルタイムで体験した人羨ましいです。長いです→
草月

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







ゴッドファーザー前2作は偉大で傑作です。3は評価は落ちるようですが私は大好きです。 好きなんですが、初見は感涙しながらも???でした・・・。余りにも1の素晴らしさ(特に個人的にアル・パチーノ)の余韻を捨てきれず、「何故?どうしてこうなるの」と。自分の期待感とそれを裏切る映画の筋に得心行かずあちこちと揺れていました。「ひょっとしてこれは失敗作か」「コッポラの真意は?」等々・・ 理解している人には簡単なのかも知れませんが、鈍くて往生際の悪い私としては、あれこれ逡巡しました。そいでもって買ってしまったんです。DVDコレクションを。「ザ・ゴッドファーザー」というメイキング本まで・・

コッポラの意図は、マイケルを破滅させることでした。彼を懺悔させた上で罰を与える・・しかも映画は思いっきり情緒的にいう指示が・・。映画はその通りになってますね。 勝手に若い頃のマイケルに惚れこんで勝手にマイケルの成功を望み、感情移入してきた者にとっては辛い3でした。年老いた醜いマイケル、背景が余りにも豪華なので余計に目立ちます。でもよく考えてみればマフィアのドンとして数々の殺人(次兄さえも)や非合法な行いをやって来た人間の末路に栄光が訪れるわけもなく、この結末は当然なのかもしれません。 でもでも愛すべきパチーノなのに・・。監督は「計算高く、父親に比べ懐の狭いマイケルの末路」とバッサリ切ってましたが、そういうもんなんですね・・・

映画の製作秘話を知ればとても私などが批判できるものでもないのですが、不満はあります。

宗教とオペラを持ってきたのは(大好きな分野ですが)なんだか安易では・・と言う感じです。Confessionがどんな意味合いのものか、日本人にとって心の底からは理解できないのかもしれません。彼の「人生をやり直したい」という願望の切実さに今一歩迫れてなかった気がします。 Tragedyを運命・性格の両面で作りたかったように思いますが、そこまでには至れなかったのではないでしょうか。コッポラ自身も「マイケルの心情に映画がどこまで届くか」と言ってますが。パチーノのインタビューでも「ずっとフランシスが僕の横でマイケルの心情を言い続けていた。あんな事は初めてだよ」パチーノが届かなかったのかコッポラの演出のせいか・・ あと少しの工夫で、栄枯盛衰の大変な絵巻物が出来上がったと思いますが・・。やや残念です。

パチーノと1ではブランドが、2ではデ・ニーロがいました。3のガルシアでは役不足です。あ、でもこの映画で打ち止めにするならそのキャスティングでいいのかもね。 この映画の芯は、タリアさんではないでしょうか。役柄としてもコルレオーネ家を懸命に支えていたと思います。コッポラの意志を一番理解していたように感じます。ソフィアさんも全然悪くはなかったと思いました。

この作品でよく言われます「ソフィアはまちがい」。見る人よって印象は随分違うんですね。私はソフィアでもOKでしたよ。ただよりベターなキャスティングはあったかもしれませんが。

キャスティングは映画の命だと思います。ベストを組めればそれに越した事ありません。この映画では、ジョージハミルトンとこの時のガルシアが不満です。それとアル・パチーノです・・・!(私は彼の大ファンですが)彼は多分この役の設定に心底納得していないのではないでしょうか。彼はいつも全力投球するタイプだと思います。彼の納得を得るような脚本なりを変えるか、或いは彼を徹底的に洗脳(?)するかでしょう(コッポラさん散々やったでしょうが)

幾つかの不満はありますし、1や2とはそもそも「時代が違う」という感じです。それでもよく作り切ったなと思います。

カヴァレリア・ルスティカーナの間奏曲を聞くと、今でもあの階段でのアルの音にならない叫びと、一転ラストの老いさらばえた白髪の彼の姿を強烈に想い出します。

また年取って再見してみたら違う感想を持つかも知れません。 映画って楽しいね。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (3 人)りかちゅ[*] Myurakz[*] ペペロンチーノ[*]

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