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[コメント] 珈琲時光(2003/日)

見る前の段階からあんまり好みの作品じゃねぇと思いつつもサクサカーの端くれとしては一青っちが主演した作品を見ないわけにはいかない。
TO−Y

この作品は私の推測するに“小津安二郎生誕100周年映画”ということなので全然日本語のわからない(実際にそうらしい)監督のホウ・シャオシエンが小津監督の『東京物語』を冒頭の10分ぐらい見て「やっぱり日本語がわからないからなんだかよくわかんないや。」と最後まで見るのを断念「でもなんとなくコツ(?)はわかった!」と勘違いしてメガホンを撮ることに・・・そんな風に感じた。

小津監督は個人的に好きな監督ではないけれど「東京物語」という作品は何も淡々した日常の中で親が田舎からやってくるということによって日常が非日常になることで戸惑う家族の様子を描いたドラマというワケではない。それは単なる設定。そこだけを見よう見まねで作っても意味は無い。

「東京物語」そこに出てくる人々の会話は日本人の気質を非常にそして非情にもよく捉えていて、それをけっしてドラマティックな演出などをしないで淡々と描いているからこそ逆にショッキングでもあり50年後の日本人が見ても「なるほどなぁ」としみじみ考えさせられてしまう云わば時代を超えることができる数少ない作品である。

「東京物語」の真骨頂はカメラワークだけでなく登場人物が話す日常会話にあるのである。

もしそのセリフにあたるのが「妊娠した。でも結婚はしない」という事ならそんなセリフ、30年くらい前の観客ならショックを受けたかもしれないがあまりにも普通すぎてショックでもなんでもない。俺にこの作品を撮らしてくれるならあそこは「人を殺しちゃった。エヘヘッ(笑)でも自首なんかしない」と、こうなりますな。もちろんそれを聞いた周りの人もオーバーに「ええっ!?」なんて二流ドラマのように驚かない。

小津のマネっ子のこの物語は登場人物の誰かに感情移入をするとか客観的に見て「このセリフは・・・」「物語の構成が・・・」などという感情も沸かないまさに淡々とした時の流れ。

いい見方をすると明治・大正時代の小説の中に描かれている時間の流れみたいに緩やかな流れで私も「昔は時間の流れが今と違ってゆっくり進んでいってたんだなぁ」とちょっとうらやましくも思っていた時間の流れでもあるのだが、この作品はあまりにも物語に起伏がなくてつまらない。

ホントなら物語が進行するにつれて「どうなってしまうんだろう?」と登場人物に関心をもってしまうハズなのに逆にどんどんどんどん無関心になっていって誰がどうなろうとどうでもいいようになった(笑)

陽子なる主人公の人間像より一青っち(サクサカーの私としてはあえてそう呼ぶことにする)の人間性のほうが遥かにおもしろおかしく素敵なのだ。彼女の才能はこういった作品よりもむしろコメディ映画の方が向いている。

「なんで1点なの?」と一青っちが見たら憤慨しそうだがこれぐらい褒めておいたらまぁいいだろう(笑)

(評価:★1)

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