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[コメント] ヒミズ(2011/日)

正直、採点が難しい作品。二階堂ふみが映される時にだけ安堵が漂うことで救いある作品に仕上がった感があり。東北大震災・津波被災地の映像挿入や生まれ落ちた環境における不幸のてんこ盛りも、震災で全てを失った方々を投影し、そんな絶望的な環境下の方々へのエールと受け止めると、ようやくこの点数になる。そんな感じです。
IN4MATION

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 正直、茶沢の詩の暗誦から始まる冒頭で「またその手法か!」とげんなりしました。

 借金ばかり作り金の工面の為だけに家に帰ってくる父親から「お前なんか生まれてこなければ良かった」「池で溺れた時に何で死んでくれなかったんだ」と何度も言われ続ける少年・住田。母親は母親で男を作って家を出て行ってしまう。

 これくらいなら、僕の幼少体験と大差ない。だから同情にも値しない。そんな不幸、不幸のうちに入らないんだよ。よくあること。

 ただ、不幸な少年の周囲には、やたらと擁護者がいてくれる。

 茶沢もそんな擁護者の一人。自分も家に帰れば両親から「自殺を強要される」という不幸を背負っているのに、彼女はその事を一切住田に告解しない。自分の不幸な境遇を住田に語って、傷を舐め合う2人の姿の方が余程リアルなのに、だ。

 住田の家の周囲に住む浮浪者たち(家や財産などを失ってしまった者たち)の目線も住田に優しい。

 ある意味で、『こんなに愛されているのに、こんなに味方してくれる人間がすぐ傍にいるのに、何ひねくれてるんだ、このガキはっ! 甘ったれてんじゃねーよ!』というのが初見の印象。

 父親を殺してしまった事で、彼の中で自分はどん底と勝手に思い込んでしまっている。だったらぐだぐだ迷ってないで、街を彷徨ったりしないで、金田が置いていった拳銃でとっとと自殺しろよ、と突き放した目線で見てしまう。

 自分で自分を不幸だ、と普通に言えない奴は大嫌い。自分だけ不幸だと思い込んでる奴も大嫌い。

 ただ、あの震災によって不幸になってしまった被災者をこの少年に重ねてみると評価はそう簡単にできなくなってしまう。

 あの震災がなかったら、この作品はどういう方向に向かったんだろう。原作漫画を読んだことがないので脚本がどの程度手直しされているのかわからない。

 もしかすると、『冷たい熱帯魚』よろしく暴力描写はより一層激しくなり、『愛のむきだし』よろしく住田は拳銃を持って茶沢の両親を殺しに走ったかもしれない。

 園監督が本来作りたかった『ヒミズ』がわからないから、採点も正直わからない。

 二階堂ふみの好演と、「未来に向かって住田少年=被災者もみんな頑張れ」という希望溢れるハッピーエンドで★4つをつけはしたが、正直よくわからん作品になってしまっている感は否めない。

 震災さえなければ。被災地映像さえなければ。もっと違った視点で観られたかもしれないのに、と思うと、僕としてはやや残念だったというのが素直な感想。

 余談ですが、「詩の暗誦」、もしくは「ロウソクをたくさん灯す行為」、は監督にとって、ジョン・ウーの「鳩」みたいなものなんですかねw

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)煽尼采 ぽんしゅう[*]

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