まず、主要キャストの整理。

益田純一（生田斗真） 鈴木秀人／青柳健太郎（瑛太）

藤沢美代子（夏帆）

山内修司（佐藤浩市）

鈴木（＝青柳）や山内の息子は過去に人を殺めている。

そうした殺人者は服役後（更正後）も幸せになる権利はないのだろうか。

いつまでもマスコミの興味本位に追い回される対象なのだろうか。

......と考えてみたが、一方で被害者や被害者遺族の感情を考えると手放しで「罪を償ったら全てなかったこと」にはならないとも思えた。

藤沢美代子も過去を持つという意味では鈴木や益田と同じだが、人を殺めた訳ではない。

彼女はアダルトビデオに出たという過去で自分を殺め、今も元彼氏に追い回され居場所を転々としている。

逃げても逃げても元彼氏・達也は現れ、彼女の周辺に彼女が出演した作品のＤＶＤをばら撒きつづける。

心に傷を負っている者同士、鈴木と藤沢が交際できたらと思ったが、藤沢は鈴木の過去を知り藤沢からの誘いを拒んでしまう。

達也も出会った当初は優しかった、という過去があるために鈴木の優しさを信用できなかったのだろう。

寮の仲間にも鈴木が青柳健太郎だという事実が判明し、居場所がなくなった鈴木は過去の殺害現場を見て回る。

山内は息子の結婚・その妻の妊娠を心から祝福できずにいる。 それが可能であれば家族が再集結すれば済む話なのだが、山内はその性格上息子の方から縁を切られてしまう。

結局、登場人物の誰にも救いがない物語のように見えるが、ラストでもし益田が鈴木の後を追って再会を果たせたのだとしたら、そこには本当の友情が芽生えたのかもしれない。

そこにしかこの物語の希望はない、と思った。

誰しも、友であったとしてもその過去が自分にとって不都合なら切り捨てる。

山内の息子・正人と結婚した千尋は彼の過去を知っても尚気持ちが変わることなく夫婦になった。

登場人物の中でただ一人、過去を赦した人物だ。苗字すら設定されていない彼女の役が、実は最も雄弁だったという皮肉。