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[コメント] ブレア・ウィッチ・プロジェクト(1999/米)

「映画」であることを拒否しつつ、なおかつ「映画」であることに固執する稀有な試み。
ゴルゴ十三

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







話題となったネット上での広報活動。冒頭で早々となされる「映画」でない事の宣言。少々不評を買ったハリウッド式劇作法によらない構成。にもかかわらずこれは徹頭徹尾映画である。

「不能」という評価は常に制度への準拠を前提にする。劇作法上の正当化としては最悪の方法でなされる異なる映像メディアの混合、小津が持ちえた様式性のかけらもないそれらの間の切り替えし。つまりこういった確信犯的な「不能」さの開陳は映画という「制度」への鋭い批評なのだ。

しかし一方でこれは紛れもなく映画である。多くの人が安心して駄作と判断できるほどには劇映画の文法に準拠している。不能=前衛を擬した映画、ある種の自己言及?

否これはもはやインフレ気味の映画のための映画というよりは、映画という構造のための映画であろう。今作が終始魔女という「見えないもの」に対する試みであることからも容易に推察される。われわれはいとも容易に映画を見るわけだが、それはこの見ることにおいて常に見えないもの、つまり「編集」という映画を構造付けるものがあって始めて可能なのである。

(評価:★5)

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