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[コメント] モテキ(2011/日)

すごく好きなシーンも沢山あったのだが、脚本がブレブレ。「オレなら開始15分でヤっとるわ!」とかそういう話ではなく。
ごう

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







まず役者は全員すごく良い仕事してます。特に森山未來。上手すぎて長澤まさみが可愛そう。悪くない、というかお得意分野の演技でハマる役だったけど、それでも相手が上手すぎた。あと役者じゃないけどリリー・フランキーとかちょっとびっくりした。だからこそモノローグがすごく邪魔だったのだけれど、そこは文系ボンクラ男映画の巨匠ウディ・アレンオマージュかと思えば納得できなくもない。

ただ、どうにも納得いかないのはラスト。

この手の話って、結末がハッピーだろうアンハッピーだろうと、「主人公の成長」これが重要でありキモだと思う。ただし、中には「成長しない」という選択肢を取る作品もあり、それはそれで良いのだが、そうなるとラストに二人がくっつく展開は不自然で、関係性は何も変わることないか、むしろちょっと悪くなったりして「それでも人生は、日常は続くよね」って言うラストでないとどうにも矛盾してしまう。

ところがこの作品、一切成長しない。何も変わらないにも関わらずラストには唐突にくっついちゃう。それも御丁寧にラスト前でまさみタンから「あなたといても成長できない」という痺れるキーワードまで言わせておきながら。…いくらなんでも通らないだろ、それはっ!それともアレか?「特に恋愛中なんかにいろいろ抱えている女の言葉は、どんなにそれっぽい、グサッとくるようなこと言われても、大抵は世迷いごとで自分に酔ってるだけだから、こっちも負けじと適当なキレイごとでその場を上手く流すか、あるいはさっさとキスでもして口塞いじゃえばOK」ってことが言いたいのか?……まぁそれは間違ってないような気もするが。

つまり、くっつくんなら主人公は成長しなきゃならない。で、この作品内でケジメつけるとしたらズバリ、まさみタンの不倫彼氏に詫び入れないといけないと思うんです。「奮起してちゃんと原稿書き上げました」って?そんなの当たり前だろ。仕事なんだから成長以前の問題。それより主人公は仕事の場であるインタビューに、テメェの勝手な恋愛持ち込んで勝手にキれてブチ壊した訳だから、そこはきちんとケジメなきゃいけない。だからラスト、主人公はまさみタンに行くのかと見せかけて不倫彼氏の前に立ち、一発侘びを入れて頭を下げる。これだけで観客のカタルシスはぐっと上がるはず。個人的には、そのまま主人公が立ち去って、まさみタンも不倫彼氏にケジメつけて…てのが好物ですがその辺は単にキモい妄想でしたはいすいませんすいません。

あと、主人公との対比として現れる編集長とか不倫彼氏に関して、編集長については麻生久美子とのシーンに妙にナマい台詞入れたり、不倫彼氏については電話のシーンにペラいやりとり入れたりして、共にキッチリ貶めてあるのも気になりました。主人公と麻生久美子と別れるシーンでも、必要以上に重い女であることを強調するようになってたり。そうやって対比の一方が貶められると言うことは、当然相対的にもう一方が持ち上げられるように感じるのだけれど、意図として主人公に感情移入させるためかな?とも思ってみても、結局主人公は終わってもボンクラのままだから意味無いし、そもそも主人公が上手くいかないのは彼らのせいではない訳だから、彼らが貶められて描かれることの意図がピンとこなかった分ノイズになったような気がする。それに不倫彼氏なんてむしろ最後はちょっと立派だったし。

映画がはじまってからオープニングタイトルまでは「何このTVスペシャル…」と思いましたが、恐らく3人の女性それぞれの色調を意図的に使い分けていたり(まさみタンはソフト、麻生久美子は、主人公といる間は人工の光、仲里依紗は曇りの自然光)、ライブハウスのシーンでのピントでの感情表現、口移しキスの複線など細々したところですごく好きなシーンがいっぱいあっただけに、特に口移しのキスなんて、水を頼まれた時点で「現実のオレなら鉄板そうやってキスにチャレンジする!」って思ってたのがそのまま、いやむしろまさみタンの方から仕掛けるというひとつ上行く形で出てきた時には「やってくれた喃…」と呟いてしまっただけに、脚本の根っこの部分でグラついていたのが非常に残念でした。

ちなみに、ここまで書いた時点でプロデューサーが、インタビュー記事の中で「この映画のテーマのひとつは「恋愛で、人は成長しない」です」と言っていたのを見つけましたが、だとしたらそこは徹底しないと。麻生久美子とか仲里依紗とかは成長しちゃってるんだもの。それにこのテーマ自体、オレは違うんじゃないかなと思います。正しくは、

「恋愛で人は成長するが、恋愛に対しては、人は成長しない」

ではないかと。恋はいつでも初舞台だぞと。

つまり梅沢富美男の「夢芝居」が正義だと。

要はそういうことです。

(評価:★2)

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このコメントを気に入った人達 (7 人)ガリガリ博士 カルヤ[*] がちお Orpheus たかやまひろふみ IN4MATION[*] ぱーこ[*]

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