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[コメント] 時計じかけのオレンジ(1971/英)

キューブリックが黙殺した第21章について(’02・8・27)
ごう

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







「A・バージェスが凄いのかキューブリックが凄いのかは微妙だが、これちょっと前に言うところのチーマーの話じゃん。30年前の作品なのにね。」←これが元のコメント。

以下は追加コメント。

恥ずかしながら、原作には映画で黙殺された第21章があることをつい最近知った。

もっとも日本及びアメリカでは原作者の意向を無視して、第20章で完結(映画でのラスト、つまりアレックスが邪悪な心を取り戻した所)させたバージョンが出版されており、日本語翻訳権を持っている早川書房からは過去に1度完全版が出版されるも絶版になってしまい、現在文庫で出ている「時計仕掛け〜」についてもやはり20章完結バージョンなのだそうだ。

で、その21章とはいかなる話なのか?

「再び邪悪な少年に戻ったアレックス。昔の仲間と再度つるみだすが、昔のような刺激を感じることもなく結局は自力で更正し、社会復帰する。」

と言う筋。非常に短い。エピローグとまでは行かないが、それに近いあっさりした話である。

キューブリック版の映画を観て、誰がこのラストを想像できるだろうか?

M・マクダウェルの邪悪な笑顔と、それとは裏腹な情け容赦ない暴力に彩られた作品なのである。そんな中でラストにまたあの笑顔を見せられたら、「あぁ、またこいつは元に、いや今まで以上に狡賢くやっていくんだろうなぁ」と思わずにはいられないではないか。

キューブリックが21章を黙殺したこと、そしてあのような観る側に21章、すなわちアレックスの自発的更生を全く予感させないような全体の流れとラストを持ってきたことにキューブリックの性悪説を根底にした底意地の悪さを感じてしまうのだが、(原作をある意味ないがしろにする部分も含めて)それがキューブリックのキューブリックたる所以なのかもしれない。

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※21章を読みたい方は

http://www.geocities.co.jp/WallStreet/2973/cw21/cw21j.html

を参照して下さい。

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2003年7月現在、以前掲載していたサイトがサーバーごと閉鎖してしまったようで、リンク先を新たに更新しました。その際私の操作ミスで、これまで投票頂いていた分が無効になってしまいました。投票を下さった方、誠に申し訳ございません。

(評価:★5)

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