[コメント] 家族ゲーム(1983/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
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幼い頃この映画を見たとき、妙に印象的だった。
「食卓を囲む」 という言葉がある。我が家では、テーブルを挟んで家族が向き合って食べるのが普通だったので、この妙な食事シーンが強烈だったからかもしれない。
豪華な食事を黙々と口に放り込む。 両親は、子供がどんな表情で食べているか見ることはない。ボールに盛ったサラダを取り分ける事もなく、自分の食べる分を自分で取って口に放り込む。
この物語で一番マトモだったのは、ちょっと神経過敏なご近所さん、戸川純だったと思う。向かい合わずに隣同士に座るぎこちなさ。違和感を彼女だけが知っていた。「この座り方苦手なんでこっちに行っていいですか?」
多感な少年と家庭教師の物語でありながら、この映画には多くのメッセージが込められている。仲良くやっていそうな両親。向き合わない両親の関係は由紀さおりの台詞で明らかになる。「あなた、どろっとした黄身好きだったんですねぇ。」
受験生を持つ家庭でいざこざが多くなるのは経験済み。 親の見栄と子供達の思い。この映画では金八先生のように「夢を追いかけろっ」なんて言わない。絵の上手い少年は、唯の受験生となる。
「お父さんに怒られるから勉強してね。」一見優しそうな母。実は何一つ子供のための言葉を発しない。「お兄ちゃんは優秀だ。おまえは俺の子だからやれば出来るんだ。」根拠の無い自信。自分の見栄を満たすために家庭教師を付ける父は、子供のために言葉を発しない。恋に破れて次第に落ちこぼれる兄。彼もそんな両親の犠牲者だ。
そんな家族でも次男の受験合格は、「共通の喜び」だった。
喜びを共にし、同じ方向を向いたかに見える家族。けれど何にも変わっちゃいない。家族が一緒になってした事。松田優作がひっくり返した食事をみんなで片付ける事。割れたお皿の意味を解ってくれたのだろうか。
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