[コメント] 霧笛が俺を呼んでいる(1960/日)
この時代の日活映画ってホントいいなぁ。まず冒頭の霧の表現から、気合が入っていてシビレる。全編に亘って要所要所で小さな前進後退移動が散りばめられ、スピーディなリズムを作っていく。
バー(「35ノット」という名前)のセットでは、バックルームからガラス越しにフロアを見渡せる、木村威夫らしい美術、空間造型がある。二本柳寛、内田良平、深江章喜というギャング達も大した見せ場はないのだが、バーのバックルームにいるだけで様になっている。殺し屋の深江章喜が拳銃の弾倉を交換するシーン、かなり長めの仰角カットが格好いい。
主人公の赤木圭一郎は『第三の男』のホリー(ジョゼフ・コットン)の役回りであり、ハリー・ライム(オーソン・ウェルズ)のような麻薬の売人、葉山良二が当然ながら美味しい役どころだ。葉山がなかなかいい。警察から逃れるために葉山が乗ることになる、ビルの窓拭き(ペンキ塗り?)のゴンドラを使ったスリルの創出もなかなか上手く作りこまれている。全体に姫田真佐久と安藤庄平の画面設計は見事なものだ。そして何と云ってもヒロイン・芦川いづみの毅然とした美しさが際立っている。デビュー間もない吉永小百合(クレジットに「新人」とカッコ書きされている時期)はまだ映画の顔が出来ていない。
#葉山が隠れている邸宅はこの頃の日活映画でよく使われる家だ。『すべてが狂ってる』とか『あじさいの歌』とかでも出てきたように思う。
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