コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] アイガー・サンクション(1975/米)

クリント・イーストウッドの絶対映画的なアプローチ。プロット展開の性急さは否定できないが、補って余りある演出力。
ゑぎ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 イーストウッドの最良作の一つ。

 屋内シーンのロー・キーの特質は本作あたりから決定的になっている。特に、ヴォネッタ・マギーとのベッドシーンの暗さは殆ど何が行われているか判別できないレベルで、これを見て怒り出す観客もいるだろうが、私なんかは想像力が掻き立てられて良いと思うぞ。また、この屋内シーンの暗さが山岳シーンの自然光の美しさを際だたせている。このレベルのロー・キーというのは、映画以外の他のメディアではまず行われない訳で、イーストウッドの絶対映画的なアプローチの一つと言って良いと思う。

 中盤のモニュメント・バレーの美しさも絶品。砂漠での裏切り者との対決シーンで、もの凄い砂塵が巻き上がるところはジョン・フォードの『アパッチ砦』を想起させる。こういう人や物を隠すという事柄に敏感な演出もイーストウッドの映画的センスの良さを感じさせる。

 アイガー山麓からジョージ・ケネディが望遠鏡で刻一刻と登頂チームの状況を把握するシーンは、凡庸な監督であれば望遠鏡で見た画面を逐一映し出すだろう。しかし、イーストウッドは全く望遠鏡の画像を出さずにジョージ・ケネディへのアクターズ・ディレクションだけで緊張感を高めていく。このあたりの演出も第一級。

 確かに、プロット展開の性急さは否定できないが、補って余りある演出力だと思う。傑作。

(評価:★5)

投票

このコメントを気に入った人達 (11 人) Orpheus 煽尼采[*] 緑雨[*] ナム太郎[*] 死ぬまでシネマ[*] ina ジョー・チップ[*] 3819695[*] ハム[*] ごう

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。