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[コメント] 大阪物語(1957/日)

溝口健二の呪縛から解き放たれてこの映画を見ることができれば、と思うのだが、詮無いことだが、どうしても比較してしまう。しかし今さらながら創作物にはその作者の人間性が如実に現れるのだということを痛感する。
ゑぎ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 勿論、本作も一言で駄作だと決めつける訳にはいかない当時の大映スタフのクォリティの高さを認めることが出来る。米の荷揚げ場所の造型等、水谷浩の美術は素晴らしいと思う。しかし中村鴈治郎が「ただの吝嗇」「ただの狂人」にしか見えない、三益愛子との競演もただのカリカチュアじゃないか。「人間の業」のようなものがまるで見えてこない。非常に表面的な演出だと感じる。表面的なカメラアイだと感じる。ラストの鴈治郎への慎みの無い演出にはもうゲンナリ。吉村公三郎は真面目に演出しているとはとても思えない。

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 溝口健二に最後までついていた助監督・宮嶋八蔵氏のホームページ「宮島八蔵 日本映画言四方山話」には、吉村公三郎の本作に対する態度がうかがえるような記述があり参考になりました。宮嶋氏は本作を「酷い駄作」と切り捨てておられます。私はそこまで思わないまでも、宮嶋氏の感想は概ね「我が意を得たり」と感じるものでした。このサイトには溝口健二にまつわる黒澤明新藤兼人についてのエピソードをはじめ興味深い内容が満載です。古い日本映画のファンの方々は検索してご覧になってはいかがでしょうか。

(評価:★2)

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