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[コメント] 温泉女医(1964/日)

ことさらに傑作だ、と叫ぶまでには及ばないのだが、しかし、とても楽しい木村恵吾の佳編だ。自転車に乗る若尾文子のカットが繋がれ、ストップしてクレジット。
ゑぎ

 伊豆あたりの温泉町を舞台とし、菅井一郎の医院に東京からやってきた代診の女医の奮闘を描く。若尾文子がタイトルロールのヒロインだ。

 お話は若尾の赴任の日から始まる。乗って来たバスが道でエンコ?して、皆でバス後部を押すのだが、こゝで相手役の丸井太郎と出会うのだ。ちなみに、このシーンでは、バスに乗っていたと思しき花嫁さんとその親族もバスを押すが、これは清水宏暁の合唱』へのオマージュか。尚、花嫁姿の登場人物は終盤に、もう一度現れる。

 また、丸井は菅井の一人息子だが、医学部を卒業しているのに医者にはならず、養蜂家になっている、という設定だ。本作の丸井を見ると、親切で優しく器量も大きい、二枚目の役がよく似合っており、この後、数年で世を去った(31歳で早逝した)ことがとても勿体なく感じられる。

 さて、もう少し主要キャストを記載しよう。菅井の医院の看護婦で渋沢詩子、婆やに飯田蝶子がおり、二人つるんでいる様子がいい。いずれも目立つ良い役だ。菅井の一番の友だちが温泉旅館をやっている中村鴈治郎で、お得意の助平キャラ。鴈治郎には歳の離れた嫁がおり、宮川和子が演じている。別の旅館の若旦那は、山下洵一郎。こちらは丸井の親友だ。これら旅館に温泉芸者が出入りするのだが、芸者役では、三原葉子倉田マユミという姐御女優と、本当は看護婦を目指していたという姿美千子が登場する。この中では倉田は、賑やかし程度の役割だが、三原はお腹の子をどうするか、というテーマを持った役。姿美千子は山下に惚れられるし、若尾が一番気に掛ける、という重要な役割りを担うのだ。丸井の座敷に呼ばれた姿美千子が、趣味を聞かれて「映画もテレビも嫌い」と云うシーンも良いシーンだ。

 画面の特徴として、本作も木村恵吾らしいローアングルは勿論多いのだが、それほど徹底はされていず、自転車に乗る若尾文子の正面カットなど、人物の目線位置や俯瞰気味のカットも多い。海が近く、高台から見える海岸線など、風光明媚なロケーションが、縦横無尽なカメラアングルでおさめられていて、とても開放感がある。若尾と丸井の演技も伸びやかに感じられ、見ていて気持ちがいい。全てを丸く収めてしまうラストの描き方は性急だし、ご都合主義だと思うけれど、それも含めてこの映画の良さだろう。

#備忘でその他の配役等を記述します。

・冒頭、鴈治郎の旅館の風呂場で、女性が倒れるが、慌てている夫は林家三平

・エンコしたバスの車掌に小笠原まりこ。運転手は早川雄三

・若尾が重体と聞いて呼ばれた宿の客にミヤコ蝶々、重体は犬のリリイちゃん。

・若尾が来てから医院に足しげく通う魚源は柳家金語楼。きっちり笑わせる。

・徹夜麻雀の若者たちのシーンでは弓恵子大川修が目立つ。

・自殺未遂をした女性に穂高のり子。その夫は南都雄二

(評価:★3)

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