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[コメント] ナイト&デイ(2010/米)

二人のスターのキャラクター設定、特に現実離れした(殆ど漫画といっていい)ヒロイックな言動・リアクション演出に負うところの大きい映画だ。二人以外の例えばピーター・サースガードにしてもポール・ダノにしてもヴィオラ・デイヴィスにしても全く普通の演技をしており、二人の突出を顕著なものにしている。
ゑぎ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 また、多くの人が感じると思うが、本作の図抜けた面白さ(図太さと云った方がいいか)は、映っている部分の荒唐無稽さ以上に、反復される時空の省略において際立っている。この省略がどんどん悪ノリぶりを増幅させるというところが上手いと思う。悪ノリを増幅させる、とはこういうことだ。まず最初の省略は飛行機の胴体着陸の夜からキャメロン・ディアスの自宅のベッドへ。二つ目はサイモン(ポール・ダノ)の倉庫での銃撃戦から、プライベートビーチ(島)へ。こゝは朦朧とした意識で垣間見たトム・クルーズの活躍がほんの少し映る。飛行機からダイブする場面とか、海上でボートを操縦する姿とか。そして三つ目は、島で攻撃されている中、ヘリコプターの前のディアスが首をつかまれ落とされて、気がつくと列車の中、という展開。このように、一つ目の省略はそれほど驚かされない。2つ目では説明的な途中経過を少し挟み納得性を得る。そして3つ目になると省かれたアクションの大きさ長さが半端無く、しかも何の説明もない、という訳だ。「何これ、面白い!」ってことになる。

 さて、これらの場面省略についてもうすこし別の切り口で考えてみると、実は登場人物の意識を表現しているだけだということが分る。上の3つの省略の例だとディアスの意識にあわせてシーンを構成しているだけであって、ディアス中心に考えると何ら省略が行われているわけではない。本作のこの時空の超越は確かに面白さに機能している。しかし、それはプロット構成から云えば、引き算(クルーズの奮闘場面をオミットするという意味で)の面白さだ。なので、有史以前に猿人によって投げられた骨が宇宙ステーションに切り換わるような、或いは、ラシュモア山で引き上げられたエヴァ・マリー・セイントが列車の寝台に引っ張り上げられるような、唖然とするような、足し算の(と云っていいだろうか、或いは、これらを観客は「省略」と感じない)繋ぎとは本質的に異質である。

#もっとも、この2例はマッチカットの観点で語られるべき繋ぎでもあります。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)けにろん[*]

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