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[コメント] シカゴ(1937/米)

1854年、家族5人でシカゴに向かう馬車の待ちポジから始まる。独特の光の処理で、ファーストカットから目を引く。この後、汽車と馬車の並走シーンがあり、シカゴの町へ着くと、今度は凄い泥濘の場面になり、私の好きな設定・演出に、とても嬉しくなる。おゝ流石はヘンリー・キングなのだ。
ゑぎ

 映画全体を通して考えると、絶好調のキングとは云い難いが、後半のシカゴ大火のパニックシーンだけが売りではない、キングらしい繊細かつ統率力のある場面が横溢している。例えば、ドン・アメチーブライアン・ドンレヴィが対決する市長選挙戦のシーケンス。こゝで見せる演説会等モブシーンの濃密な空気。或いは、タイロン・パワーアリス・フェイの司式の後、パワーとドン・アメチーが殴り合うことになる場面もいいファイトシーンの演出だ。

 ラストのシカゴ大火は1871年の出来事とのことなので、もろ西部劇の時代背景と重なるのだが、西部劇で描かれる(例えば最近見たデルマー・デイヴィス『カウボーイ』で出てきたような)シカゴのイメージとはかなり違い、大都会として描かれる。ヒロインの歌手アリス・フェイが唄う酒場についても、西部劇でよく見るサルーンとはスケールが異なり、舞台の広さは劇場と云っていいぐらいだ。その他ガンマンや牧童を代表とする西部劇的意匠は殆ど見られない。ただ、シカゴだけに、畜産の集積地であり、大火のシーケンスで、スタンピード(牛の暴走)が描かれている。このスタンピードの演出も含めて、大火のシーケンスの画面造型は今見ても充分見応えがある。

(評価:★4)

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