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[コメント] 天使の顔(1953/米)

ムードのあるシーンの連続だし、唐突なアクションで瞠目させられる場面も持つ犯罪映画なのだが、どうも、人物の一貫性に難があるというか、少々分裂気味のキャラクターが目立つ。却ってそこが予測不能である、理屈の無い良さである、という部分もあって、複雑であるということでは、オットー・プレミンジャーらしい。
ゑぎ

 例えば、冒頭、ロバート・ミッチャムジーン・シモンズの出会いの場面で、唐突にビンタの応酬をする、なんて部分は、普通ありえない、という意味で、とてもいい。こゝからシモンズはミッチャムに首ったけになる。しかし、ミッチャムには恋人のモナ・フリーマンがいるのだが、このフリーマンもよく分からない、表情が読めないキャラなのだ。他にもミッチャムの同僚のケネス・トビーも、途中で人格が変わってしまうし、シモンズの邸宅の使用人である日本人夫婦も意味不明な会話がちらほら。さらにヒロインのシモンズ自身が一番つかみどころのない曖昧模糊とした描かれ方。ミッチャムが、すぐにシモンズの殺意に気づく、という展開が不思議に感じられてしまう。という訳で、この複雑さはワザとか?撮影現場でのトラブルが伝えられている作品でもあるからして、やっぱり、現場が混乱していたのだろうか。

 一番良いカットは、シモンズが崖上からタバコを崖下に落とす場面での、落下するタバコのカット。あるいは、エンディング前に、シモンズが邸宅の各部屋を歩いて回る、ローキーの場面か。この繊細な演出は「成瀬みたい」と思った。

#備忘でその他の配役等を。シモンズの父親はハーバート・マーシャル。継母がバーバラ・オニール。弁護士役はレオン・エイムズ。検事はジム・バッカス

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)袋のうさぎ

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