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[コメント] ジャージー・ボーイズ(2014/米)

まず、第一感、ウディ・アレンビリー・ワイルダーを想起してしまう。また、これは脚本にかなり忠実に撮影されたのではないかと邪推する。見終ってから調べて分かったが、脚本家には『アニー・ホール』のマーシャル・ブリックマンが名を連ねているのだ。正直云って、私はカメラ目線モノローグの多用は嫌いだ。
ゑぎ

 イーストウッド監督作の中では、撮影現場の創意を感じられる部分がもっとも希薄な部類であり、そういう意味で物足りない。

 ただ、それでも良い演出は沢山ある。冒頭の夜の強盗シーンのドン・シーゲルばりのスピード感。その前の、クリストファー・ウォーケンに送ってもらったフランキーを、母親が窓から覗くカットの丹精さ。中盤、久しぶりに帰宅したフランキーが夫婦喧嘩するシーンの後、階段の踊り場に忽然と娘が現れる場面。そしてこの娘と寝室で話をする仰角カットもとてもいい。

 墓前のシーンの後、一人座っているフランキーへカメラが寄り、いったんカメラ目線になり、観客に初めての彼のモノローグを期待させておいて、モノローグはない。この意図的な肩すかし部分は重要なポイントだろう。映画というメディアの真実性(写実と捏造)をより露わにする。しかし、この部分も所詮プリプロダクションにおける設計ではないか、という誹りを免れない部分ではある。

#テレビでビリー・ワイルダーの『地獄の英雄』が映り、科白でもジャン・スターリングの名前が出る。彼女がビンタされるシーンが印象的に使われる。少なくもアレンとワイルダーへのリスペクトを思わせるのは脚本へ織り込み済みではあっただろう。

(評価:★3)

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