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[コメント] フランシス・ハ(2012/米)

主演及び共同脚本もつとめたグレタ・ガーウィグの魅力が弾ける佳編だ。客観的に演者の切り口で見ても、本作は圧倒的なガーウィグの女優映画であり、後の監督としての活躍も知っている今となっては、ノア・バームバック以上にガーウィグの映画だと思えてしまう。
ゑぎ

 しかし、本作の質的な功績及び責任はバームバックにある、という認識を持つべきだろう。本作は、プロの舞台ダンサーを目指す、フランシス−ガーウィグの一時期を、親友である女友だちや、同居人の2人の男や、その他の友人、友人の友人、関係者などを絡めてスケッチ風に切り取った、というような作品だ。フランシスの孤独や挫折が描かれる部分もあり、重い描写も無くはないが、多くは、軽快な自由闊達なカメラワークで映像が繋がれ、見ていてずっと気持ちがいい。例えば、舗道を走るフランシスの俯瞰気味での横移動ショット。そのショットの中で回転運動をするフランシス。

 同居人の2人の男は、レヴ−アダム・ドライヴァーとベンジー−マイケル・ゼゲン。フランシスはどちらとも一緒に寝ることはないが、関係性から云うと、フランシスのベッドに何度も飛び込んで来るベンジーとの関係が面白い。ただし、彼ら以上に、やっぱり、親友のソフィー−ミッキー・サムナーの描き方は、別格なのだ。いったんは考え方が合わず、疎遠になるが、挫折したフランシスが母校(大学)の学食でアルバイトをしているところで、偶然ソフィーと再会する。その後の顛末は、本作の一番良いシーケンスだろう。

 あと、フランシスの二つの旅行の場面も忘れがたい。一つ目は、クリスマスに父母のいるサクラメントへ帰郷するシーン。空港エスカレーターのショットの簡潔な繰り返し。もう一つは、思いつきで、ヤケクソのように、パリへ旅をする場面。夜眠れず翌日寝坊し(16時に起きる)、ちょっとセーヌを観光しただけで帰る。ソフィーから携帯に電話があっても、パリにいるとは云わない、短い旅。

 そして、タイトルの「ハ」について。もちろん、ネタバレになるので、詳述は避けますが、これは、ラストのラストで種明かしされる、とっても愉快な趣向だと思う。多分、ガーウィグかバームバックが(その友達が、かも知れないが)、実際に経験したことなのだろう。ラストのラストでタイトルの意味が分かるので、映画全体の満足度も高くなったと思う。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)ぽんしゅう[*] DSCH

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