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[コメント] 三人の妻への手紙(1949/米)

ジョゼフ・L・マンキーウィッツって人はヤッパリ優秀な脚本家である以上にビジュアリストとして評価されるべき人だ。何と言っても本作にはヒッチコックの『』と並ぶ驚愕の鳥瞰ショットがある。
ゑぎ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 単に大俯瞰を有難がっている訳ではない。三人の女が見つめる公衆電話のショットから遊覧船の大俯瞰ショットへ繋ぐ、この視点移動に興奮しているのだ。それは登場人物を冷徹に突き放しつつ、作者の、そして観客の感情をまるでフィルムに乗っけてしまうかのような演出だ。 また、各々の回想の導入部の繋ぎは画面と音の使い方いずれにおいても凝りに凝っている。或いは画面への人物の出入りのコントロールも完璧に決まっている。そしてボランティアが終わった後、遊覧船の乗り場で並んで立つ3人の女のカットなんかはとびっきりのフォトジェニックなカットだ。

 プロット展開について云うと最初はジーン・クレインに力点が置かれているのかと思わせておいて後半になって圧倒的にポール・ダグラスリンダ・ダーネルの映画になっていく、という展開がいいですね。ダーネルの実家は線路の横で、列車が走る度に家が揺れる、というギャグアイデアは単純にそれだけでも面白いのだが、例えば二人が抱き合ってキスするカットで列車が通る部分では、抱き合った二人が振動することでエロティックな意味合い(セックスの暗示)が出てくる。このようにプリプロダクションで出たアイデアを映画として画面で機能させていく演出が第一級だ。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (4 人)けにろん[*] 動物園のクマ[*] ジェリー[*] のこのこ

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