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[コメント] クレオパトラ(1963/米)

特筆すべき場面は、矢張り、クレオパトラのローマ入場の場面でしょうが、それ以上に、シーザーとの出会いの夜の、シーザーが癲癇で苦しむのを覗き穴から見るクレオパトラから始まって、寝室で苦しむシーザと、彼のことを考えるクレオパトラをマッチカットのように執拗に繋いで見せるカッティングが、一番の見せ場だと、私は思う。
ゑぎ

 本作は巨額の製作費と収支上の大失敗作ということで悪名をとどろかす映画だが、完成した本編を見る限り、まずは、エリザベス・テイラーの衣装の絢爛さに目がいってしまう。多分、全シーン異なる衣装だろう。また、クレオパトラの乗っている船や、ローマの軍船等、船の美術装置が凄い。海戦シーンも『ベン・ハー』のような模型じゃない、本物の船の全景が収められているのだ。或いは、冒頭や、休憩前、エンディング等、絵画と実写がディゾルブで接続する処理が数カ所あるのだが、これなんかも、ポストプロダクションに亘るまで、金がかけられていることがよく分かる。

 出演者に関して云えば、主演の3人のスターについては、それぞれに見応えのあるパフォーマンスだと思うのだが、本作は魅力的な脇役に恵まれていないと思える。マーティン・ランドーヒューム・クローニンロディ・マクドウォールぐらいしかいないのだ。アウグストゥス役のマクドウォールは、後半の敵役として、よくやっているが、いかんせんちょっと弱い。

 しかし、本作においても、ジョゼフ・L・マンキウィッツのドラマ演出は、長尺ながら見事に緊張感を維持している。やっぱり、「シーザとクレオパトラ」「アントニーとクレオパトラ」の2作で見たかったと思う。それぞれ3時間ぐらいあってもいい。

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#以下は15年ぐらい前に「Newsgroups: fj.rec.movies」のためにまとめた文章。時価換算で最も製作費の高い映画に関するスレッドへのフォロー記事です。せっかくなので転載しておきます。

 まず、当初はホークス『ピラミッド』のジョーン・コリンズをクレオパトラ役で想定していた会社側に対して、製作者のウォルター・ウェンジャーがリズ・テイラーに拘り、結果的にハリウッドで初めて1俳優1作品100万ドルというギャラを支払った、ということが上げられるでしょう。また、当初(シナリオも完成していない段階で)、ルーベン・マムーリアン監督、リズ・テイラー、ピーター・フィンチスティーヴン・ボイドというキャストで英国のパインウッドスタジオに豪華セットを組み撮影に入ったのですが、リズ・テイラーが病気で倒れたことや、矢張り英国ではエジプトの光を得ることができなかったことで、英国のセットを捨てて撮影所をローマに移しています。

 英国での撮影時点ではシナリオもなく、ローマで撮影を再開する際、脚本家としての才能も買われて監督はジョゼフ・L・マンキウィッツに替わり、キャストもレックス・ハリソンリチャード・バートンに交代します。結局、シナリオは整理しきれないまま撮影が進みます。

 その後、製作者もウォルター・ウェンジャーが更迭され、実質的にはダリル・F・ザナックが采配を振るい、『真昼の決闘』等の名編集者エルモ・ウィリアムズがなんとか4時間にまとめたバージョンが公開にこぎつけます。

 という訳で、リズ・テイラーが衣装を65回も替えている等という話も有名なのですが、(主に収支上の)大失敗作って、「誰のせい」というのは難しいですね。

#「映画監督の未映像化プロジェクト 」(エスクァイアマガジンジャパン)及びIMDBのTriviaを参考にして記述しています。

(評価:★4)

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