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[コメント] アンジェリカの微笑み(2010/ポルトガル=スペイン=仏=ブラジル)

本作もノイズの映画。信じがたいような、誇張されたラジオのノイズと共に、主人公イザクは登場する。彼はノイズを纏う人なのだ。道路を走る大型車の音。葡萄畑を耕す鍬、或いは耕運機の音。農夫たちの歌声。
ゑぎ

 特に、オフスクリーンから聞こえる自動車の騒音の使い方は尋常ではない。ファンタスティックな画面の処理は勿論見所ではあるが、それ以上に、この音響には新規性、或いは特異性を感じる。

 そして、本作も開けられた窓とドアの映画であり、イザクの部屋の窓はラストまで常に開いている。常にというのは誇張なく一日中ということであり、このこと自体、当然ながら多くの観客は異常な感覚を持つ(それを見越したように、真夜中、窓から部屋の中へ蛾を入りこませ、バタバタ飛ばしたりするという稚気溢れる演出がある)。また、ドアも一度開けられると、閉められることがない。それはイザクの部屋だけでなく、教会でも、アンジェリカの館でもそうだ。特にアンジェリカの館で、屋内に置かれたカメラがドアの向こうの屋外を切り取る様は、まるでジョン・フォードの画面が紛れ込んだような興趣がある。窓とドアは異世界との境界の表象としてこゝでも見事に働いている。

 尚、レオノール・シルヴェイラの見せ場をもう少し作って欲しかったと思う。その代わりに、館の怖いメイドがいい味を出している。彼女の存在も異世界との接点(使者というか)を思わせる。

(評価:★4)

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