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[コメント] ムーンライト(2016/米)

とても短く感じた。あっという間に終わったという感覚。そう感じるだけの緊張感があり、全編息を詰めるように見つめた。シャロンとケヴィンをもっと見ていたかったとも思う。
ゑぎ

 私はオスカー嫌いなので、さほど見たいと思っていなかったのだが、ウォン・カーウァイブエノスアイレス』へのオマージュがある、という記事を見かけ、本作を見る優先順位が跳ね上がり、見た。

 三部構成。オープニングから第一部はフアン−マハーシャラ・アリが牽引し、強烈な存在感を発揮する。それだけに、第一部の魅力が頭抜けている感もある。第二部以降、フアンが退場してしまうのは、かなりの喪失感も覚える。しかし、この措置は逆に、本作の図太いプロット構成を際立たせてもいるのだ。同じように、テレサ(フアンの彼女)−ジャネール・モネイも第二部までは登場するが、第三部では出てこない。このあたりのプロットの取捨選択はとても潔い。

 第三部の主人公シャロン(トレヴァンテ・ローズ)の成長ぶりには確かに違和感もあるのだが、ただ、私は全体を通じても、母親−ナオミ・ハリスとの対話シーンといい、ケヴィン−アンドレ・ホランドのもとへ向かう自動車のシーンからラスト迄といい、とてもきめ細かな演出、カット割りで、三部には胸締め付けられた。特に、ケヴィンに会いに行く車のシーンでBGMとして「ククルクク・パロマ」(これはウォン・カーウァイ『ブエノスアイレス』のオープニング近く瀑布の画面の曲)がかかり、海辺の子どもたちにディゾルブする処理には、さあ、いよいよクライマックスだ、という感慨を覚えるし、ケヴィンのダイナー(レストラン)へ入る手前の夜の舗道のカットからダイナーでの二人のやりとり、ドアベルのカットの反復。夜の砂浜と浜辺の見せ方の簡潔さ。そして、肩と顔を寄せ合う二人のツーショント。あゝやっぱりカーウァイなのだ。

 あと、もう一つ、特記しておきたいのは、第二部の夜の浜辺のシーンで、シャロンとケヴィンを背中越しに切り返すカット繋ぎ。これは記憶に残る。

#さらに付け足し。屋内装飾、壁にかかった絵(浮世絵)や、扇子などを見ても東洋趣味が分かる。少年期のシャロンの家とフアンの家の両方で見られるのだから、少々奇異な拘りと云えるだろう。

(評価:★5)

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