コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] ジャッキー ファーストレディ最後の使命(2016/米=仏=チリ)

オープニングは黒画面に弦楽でスラーを強調した人を食ったような音楽。このテーマ曲がその後も要所で流れるのだが、多分作り手は本作がある種の喜劇であることを宣言しているのだろう。喜劇と云うのが云い過ぎだとしても、かなり客観的な、突き放した視点で作られている。
ゑぎ

 一方で、本作はナタリー・ポートマンの、圧倒的な顔の映画だ。ファーストカットは歩く彼女の顔アップだし、ラストカットもJFKの肩に顔を埋めるように傾けたカットで終わる。しかし、何と云っても、それが圧倒的だと思わせるのは事件直後、血や脳漿の付着した、頬や額を拭く、鏡に映ったアップカットだ。なんという強い画。思わず、マリア・ファルコネッティの泣き顔を想起する。このカットだけでも私は本作を最大限に擁護したいと思う。加えるなら、議事堂へ棺を運ぶ場面で、車の窓越しに映る顔のカットもいい。

 記者ビリー・クラダップとのインタビューシーンは正面に近いバストショットでの切り返しで構成される。特に屋内シーンの照明は繊細だ。その他、テレビ撮影風景、テレビ画面のモノクロ映像、或いは記録映像と記録映像を模して撮影されたフォーカスの甘いカット(例えば議事堂内の棺のカットだとか)とバリエーションの豊富なフィルムが繋がれる。全体に記録映像とのルックの調和のためなのだろう、ワザとざらついた光学処理が行われている。このあたりの全体的な撮影技術も一級品だと思う。

(評価:★5)

投票

このコメントを気に入った人達 (2 人)ぽんしゅう[*] 袋のうさぎ

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。