コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] 夜に生きる(2016/米)

原題が『LIVE BY NIGHT』。ラオール・ウォルシュの映画やニコラス・レイの映画を想起させるようなタイトルで、それだけでも志を感じてしまい、応援したくなるのだが、今一つ、厳しさが足りない出来だ。それは矢張り、主演者・ベン・アフレックの個性という面が大きいだろう。
ゑぎ

 しかし、ロバート・リチャードソンの光の扱いは、相変わらず面白いと思う。複雑な光源の照明のシーンが多い。窓からの太陽光を模した白色の光、電球色の室内灯、シエナ・ミラーと会うホテルのロビーで2階の手すりの向こうにミラーがいる場面や、ベッドのアフレックと父親ブレンダン・グリーソンとの会話シーンもいい光具合。

 また、冒頭、ビルの窓から突き落とされる男のカットには驚いた。路上までの落下が捉えられる。その後の酒場の爆破カットもそうなのだが、これらはコンピュータ処理なのだろう。ぱっと見には、全くCGとは判別できない訳で、このようなCG利用にこそ進歩を感じる。よくある、広大な風景の俯瞰から始まって、大人数のモブシーンの導入部をCG丸出しの画で見せるカットには飽き飽きしている。

 フロリダ州タンパのシーンからはギアチェンジしたようにルックも変わるのだが、列車の到着と、ホームでのヒロイン、ゾーイ・サルダナの登場のあたりも懐古趣味かも知れないが、古い犯罪映画への愛情を感じる。しかし急造のセットなのか、全体に安っぽい画面となっているのは残念だ。警察署長クリス・クーパーの娘がエル・ファイニングで、この人が最も印象に残る助演者。彼女が説教師として描かれる展開も予想外で驚きがある。この役は『エルマー・ガントリー/魅せられた男』のジーン・シモンズを想起させる。ファニングにもジーン・シモンズに勝るとも劣らない清冽さがある。

#『夜までドライブ』は『THEY DRIVE BY NIGHT』、『夜の人々』は『THEY LIVE BY NIGHT

(評価:★3)

投票

このコメントを気に入った人達 (1 人)3819695[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。