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[コメント] ノクターナル・アニマルズ(2016/米)

複数形になっているが、タイトルロールは誰なのか。直截的には、犯罪者レイ(アーロン・ジョンソン)達なのだろう。しかし、レイと対決する、という意味ではトニー(ジェイク・ギレンホール)も、ボビー(マイケル・シャノン)もあてはまる。
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 さらに、レイとの二重性ということでは、スーザン(エイミー・アダムス)こそが、もっとも相応しいかもしれない。「弱い(weak)」というキーワード。スーザンとレイの二人が、大事な場面でエドワード/トニー(ギレンホール)に対して使う言葉なのだ。スーザンはエンディング以上に、小説の中でレイを通じて復讐されたというべきか。

 小説の視覚化イメージ、スーザンの現在、スーザンの回想、という三重構造を取る構成だが、やっぱり、この小説部分が、ジム・トンプソンみたいでなかなか面白い。警部補シャノンの造型がキャラクターでは一番の見どころだし、夜のハイウェイでの嫌がらせ行為とチェイスシーンが出色の出来だ。また、小説世界とスーザンの現在とを繋ぐ際に、マッチカットで見せるカッティングがキャッチする。ホテルのバスルームとシャワー。あるいは、赤いソファーの上の母娘の裸体と、彼氏と寝る娘の裸体。

 そしてスーザンの回想は、こゝでもイマイチ取ってつけたような感覚が強いのだが、NYの舗道で雪が舞う中の再会のシーンは、アダムスもギレンホールも上手く若く作っていて新鮮な驚きがあり、さらに、続くレストランでの会話シーンの切り返しもいい。また、ワンシーンだけの登場だが、アダムスの母親役ローラ・リニイの貫禄にも唸る。あと、美術館のスタフでジェナ・マローンを見ることができたのも嬉しかった。彼女の赤ん坊の監視カメラの映像。スマホにレイの舌出しのイメージ処理とスマホのガラス画面の亀裂もキャッチー。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (3 人)jollyjoker ぽんしゅう[*] セント[*]

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