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[コメント] スリー・ビルボード(2017/米=英)

ラストもいい。このラストでポイントを上げる。このカットで終わればいいな、と思っているカットで終わる。
ゑぎ

 冒頭から、草原の広告看板の遠景、フランシス・マクドーマンドの登場、何か思いついた表情をした後の、エビングの町の広告会社での行動、サム・ロックウェルが夜、看板を見つけるシーン、といった序盤の展開は、かなりいい調子。ウディ・ハレルソンの懐の深いキャラが良く、特にブランコでのマクドーマンドとの会話シーンの表情には感心した。このシーンだけで、ロックウェルに勝っていると私は思う。馬房の前での顛末の後、馬がゆったりと外に出て草を食む時間の描き方もいい。

 しかし、中盤登場するマクドーマンドの別れた夫と19歳の恋人の描き方が、ちょっと戯画化され過ぎており、違和感がある。前半から豊かな時間の描写や知的な冗句・警句で構築してきたムードが、いきなり、直截なコメディ志向に突入する感覚を持った。同じように、娘のフラッシュバックもイマイチ。こんな因果なワザとらしいシーンは、ノイジーなだけでいらない、というのが私の感覚だ。さらに、ロックウェルの切れっぷりも、ちょっと作り物めいている(シーケンス・ショットとしては見応えあるが)。火炎壜もやり過ぎ。こゝまで描くと、アイロニカルなファンタジーと云えると思うが、主演がマクドーマンドなだけに、あからさまなコーエン志向に思えてくる。

 ただし、全ての登場人物が、映画中に変貌を遂げることへの徹底は圧巻で、皆、登場の際に観客へ与えた印象が、映画中にギアチェンジする。これを、誰一人、分裂したキャラクターと感じさせずに、ぎりぎり納得性を担保しているところが素晴らしいし、面白さに繋がっているだろう。主要登場人物については補足する必要もないと思うが、例えば、別れた夫の19歳の恋人であれば、最初の登場ではアホとしか思えない扱いだが、後半のレストランのシーンでは、マクドーマンドへ重要な示唆を与える人物として描かれるのだ。

#ロックウェルの方が分かりやすいキャクタリゼーションなので、彼が助演賞を取るかもね。でも、ロックウェルは主演賞候補でもよかったぐらいの役割だと思います。

(評価:★4)

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