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[コメント] きみの鳥はうたえる(2018/日)

冒頭近く、染谷将太と分かれて舗道に佇む柄本佑に、萩原聖人石橋静河が出会う。別れ際に石橋が柄本の肘を触る。こゝから、唐突にカメラが屋内(店舗内)に入り、ウィンドウ越しに柄本を映すのだ。さらに、このカットの中で前進移動も入る。おゝと驚かされたが、これって、とても古い映画のようだと思う。
ゑぎ

 シノプスや道具立てについては、ヌーベルバーグの映画を彷彿とさせる。深夜の繁華街や、住宅街、誰もいない街並みの佇まい。そこを柄本と染谷、柄本と石橋らが歩く姿がとてもいい。あるいは、多くの人が指摘する通り、クラブで、3人がダンスする場面は最高だ。石橋の気持ち良さそうな笑顔を見ているのは、映画の至福だと思う。あと2倍ぐらい長くてもいいと思う。これらのシーンは照明(色遣い)の良さを特に感じる部分でもある。

 また、登場人物の意思決定プロセスについて、詳細に描かれないのも良い点で、特に石橋のあらゆる行動の理由が排除されている。なぜ彼女は柄本を誘ったのか、なぜ、彼女は、すっぽかされても怒らないのか、パンをあげるのか、コンビニで支払いをするのか、染谷と二人でキャンプへ行くのか等々。推測できなくはないが、生活環境やバックボーンも全く提示されないので、本当に憶測の域を出ないのだ。映画は理由を描くものではなく、観客は(私は)理由を知るために映画を見るのではない。

 あと、最初に感じた古い映画のようだ、という感覚は全編に亘って思い続けることになる。例えば肘タッチの反復のようなプロット構成の周到さ。同じように柄本が無人の部屋に入って来る際の「ただいま」と冷蔵庫の扉の反復には計算高過ぎて嫌らしさを感じた程だし、他にも、モノローグ(ナレーション)の使い方も効果抜群だ。そして、ラストの石橋のバストショットが特徴的だが、仰角気味(ローアングル)のカットが結構多く(部屋でのシーンは殆どローアングル)、構図がとても安定している部分もそうだ。古い映画のよう、というのは、ヌーベルバーグよりも、もっともっと古い映画のよう、ということで、この監督には、度量の大きさと共に職人的な才能を感じる。

(評価:★4)

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