[コメント] search/サーチ(2018/米)
主人公が電話をかけまくる映画なので、このような疑似カットバック(切り返し)が頻繁に出てくるが、当然ながら、殆ど正面バストショットでの切り返しとなる。ただし、それぞれ、目線はカメラを見ているわけではない(ディスプレイの、相手が映っているウィンドウを見ている)ので、イマジナリーラインを意識させないように出来上がっている。正面ガン見のカットもあったが、これをもっと上手くやれば、小津みたいな異次元の時空を作れるのにな、と思いながら見た。
また、カメラはPCや電話相手のスマートフォンのカメラだけでなく、部屋に取り付けた監視カメラも上手く使われる。あるいは、インターネット上のライブニュース配信のカメラも駆使してカットが繋がれる、という、良く考えられたものだ。さらに、例えば監視カメラをモニタリングしているPC画面を、引きとアップを駆使してアクション繋ぎのように繋ぐ。つまり、カット・ズームイン(ポン寄り)ということなのだが、それは動的な場面だけでなく、カメラ画像じゃないPC画面(メールやメッセージのテキスト入力画面等)でも、かなりこの技法は使われているように思う。ディスプレイを映したカットなので、寄るとブロウアップしたかのような粗い解像度になり、ざらざら感は、ある種の感情(サスペンスであったり切なさであったり)の醸成にも寄与する。
あと、多くのSNSが活用される中で、「YouCast」というライブ配信ツールが決め手になるが、この画面(ウィンドウ)で、部屋で机に座る娘が画面手前に映り、画面右奥のドアの向こうで父親の声がし、ドアを開け、部屋に入って来る縦構図は驚きのある良いカットだ。娘の微妙な表情が良く、ウィンドウ内で、カット・ズームインし、粗い粒子の父親のカットに繋ぐ部分には心揺すぶられた。
ということで、とても巧妙・周到な映画ではあるが、技巧的には既存の映画の撮影・編集の枠組みに絡め取られてしまっており、なんら逸脱のない、窮屈さを増しただけのシロモノとも思える。
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