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[コメント] 変奏曲(1976/日)

中平康の遺作。オープニングにスタフキャストのクレジットが入るが、スタフの部分の最初の方に撮影助手数人の一枚があり、高間賢治らの名前が見られる。あれ?撮影者はいつ出るのかな?と思っていると、浅井慎平の名前は、監督の直前(最後から2番目)に出た。特別扱いだったことがよく分かる。
ゑぎ

 中平康の遺作は、日活時代のようなマシンガントークが全然ない、逆に気怠い長い間があちこちにある、全編フランスを舞台とした恋愛映画(というかセックスに関する映画)なのだ。上映されたプリントはひどく褪色したフィルムで、公開時は美しかったろうと、ずっと思いながら見た。また、ヒロインの麻生れい子は殆どのシーンで裸になるのだが、局部を隠すため、大きく矩形にマスキングした処理が施される。これは興醒め。ぜひとも、いつか無修正のリマスター版が見たい(ムリかな....)。

 さて、本作の出来具合の全般的な感想を云うと、決して傑作とか佳作というようなレベルではないのだが、しかし、あちらこちらで良い意味でのひっかりが残る決して悪くない作品だ。まずは非常に音に自覚的な映画であり、全編アフレコと思われるが、台詞の入り具合も違和感がないし、雷や飛行機といったノイズの使い方もたいへん凝っている。それに、マントン(コートダジュールの都市)での音楽祭の場面がクラマックスと云ってよく、開巻のフラメンコといい、本作は、音楽についての映画と云ってもいいだろう。

 また、一方、窓の映画でもある。特にマントンのホテルのシーンで出てくる、向かいの家の御婆さんのいる窓。これが、同じ窓だが無人の状態も含めて、何度も何度も反復され、麻生の強迫観念として表現される。他にも、音楽祭のシーンで、コンサート会場の教会を眼下に見る窓も、強烈な使い方だし、ラストのパリのアパートメントのシーンでは、窓から外を見る麻生のカットがエンディングなのだ。

(評価:★3)

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