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[コメント] さよならくちびる(2019/日)

成田凌門脇麦のアパートへ迎えにくる場面から始まる。二人が歩くカット等フルショットの構図がとても端正で、こゝで既に気持ちよくなる。2人は小松菜奈の待つ、ジープ・ラングラーに乗り込む、という良い出だし。
ゑぎ

 2018年の夏の約10日間。3人で回るライブ先は浜松、四日市、西天満、新潟、酒田、弘前、函館。最初の浜松へ向かう途中、ガソリンスタンドで休憩するシーン。小松が先に店内のトイレに入って、先を越された門脇がトイレの前で待ちながら、店内でコーヒーを飲む男を見る。小松が出てきて、門脇がトイレに入る。今度は小松がコーヒーの男と目を合わせる。そして、門脇がトイレから出てきて、コーヒー男の方を見ると、成田がいる。小松とコーヒー男は店の外(窓外)で、MINIローバー(男の車)に乗り込む。という、この繋ぎも見事なものだ。

 序盤は、この映画はもしかしたら回想シーンを挿入しない映画かと思い、ドキドキして見ていたのだが、浜松のライブハウスの場面で、初めて回想が入る。以降、何度か入るが、この最初のフラッシュバックは、よく考えられている。全編通じて、東屋のある公園のベンチで門脇が歌っている回想シーンが白眉ではないか。風で木々の枝葉が揺れる、このカットは絶品。

 大阪(中崎町辺り)の次の場面で出て来る、テレビ番組の撮影という体(てい)の部分、こゝは臭い。2人の女子高校生も居酒屋でのインタビューも。居酒屋で、小松が不貞腐れて出ていくのもワザとらしい。

 ただし、大阪(西天満)の場面の次の朝、湖畔に車が停まっているカットが唐突に繋がれ、続く近くの森での小松と成田の会話場面が良いので、すぐさま挽回する。この辺りから、3人の関係性が徐々に浮き彫りになり、見ている我々も、彼らの切なさを共感できるようになる。

 結局、というか、矢張りというか、題名にある通り、この映画はキスの映画なのだ。しかし、もちょっと言葉を足すと、題名が示唆する通り、キスを拒む映画だ。小松は二人にキスをし、拒まれる。門脇は二人からキスされ、拒む。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (6 人)ペペロンチーノ[*] ぽんしゅう[*] 赤い戦車 なつめ[*] 水那岐[*] けにろん[*]

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