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[コメント] 誰もがそれを知っている(2018/スペイン=仏=伊)

よく見せる画面も多いし、プロットとしても周到に緊張を維持するが、どうも中途半端な部分が気になる。例えば、冒頭の時計台・鐘楼の内部の描写。時計の文字盤部分が割れて、穴が開いている。その穴に向かって、外に出られない鳩がバタバタする。これなんかも、いきなり、メタファーとしてはありきたりじゃないかと思ってしまう。
ゑぎ

 続く過去の事件の新聞の切り抜きが映される部分も、これは犯人側の場面であることは観客にすぐ分かる演出なのだから、もう少し、フックになる使い方があるだろうと、思ってしまうのだ。

 タイトルは2人の主人公ハビエル・バルデムペネロペ・クルスの関係のことを指している。お互いに家庭を持っているのだが、クルスの妹の結婚式の最中に、クルスの娘が誘拐されたことによって、他の家族や知人を巻き込み、2人の関係が歪みだす。さらには、2人のみならず、徐々に関係者の過去と現在の秘密が明らかになる。

 結婚式の描写では、教会での司式の場面から、ホームムービーっぽいハンディカメラ映像と、プロのドローン操作者も登場して撮影された、ドローン映像が繋がれて、面白い画面になっている。しかし、これらの動画ファイルから、犯人の手がかりがつかめるか、という部分で中途半端な扱いなのだ。

 ただし、用事があって結婚式に参加できなかったクルスの夫が、事件後になって、遅れて登場する、というプロット展開が、興味の持続に周到に機能する。彼が敬虔なクリスチャンで、神が助けてくれると信じている、という設定もいい。また、バルデムの妻役のバルバラ・レニーも、とても綺麗な女優で、ドキドキするカットが多くあるが、複雑な感情を表現する難しい役どころを上手く演じ切っている。結局、真犯人の見せ方も呆気な過ぎる感があるが、人質奪還、身代金受け渡しの場面の演出は、なかなか良く、矢張り、上手くいった演出には並々ならぬものがある。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)3819695[*] けにろん[*]

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