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[コメント] ラストムービー(1971/米)

現在(21世紀)の映画に本当に近い。時間と空間の解体と錯綜。確かに、早過ぎたのだろう。今見ると、そんなに突飛な繋ぎでもないし、今見るからこそ面白さが分かると思う面もあるが、当時の人々が呆気にとられたであろう驚き(或いは怒り)は、半減しているかも知れない。
ゑぎ

 冒頭から全く意味不明。ペルーなのか。祭りの場面。登場から血みどろのデニス・ホッパー。この血だらけの風体は後半に繋がる。子供達はカメラ目線OKで、ノン・フィクションっぽい画面だ。そこに西部劇の完成品と撮影シーンがごちゃ混ぜに繋がれる。見事な高速度撮影も多いが、人物はロングショット主体で、またアクションも激しいので、ピーター・フォンダとか顔がよく見えない。撃たれて建物の屋根から落ちるカットが多数。ロープを使って、騎乗者が馬から後方へ吹っ飛ばされる演出なんかを丹念に見せる。個々のシーンは面白い。面白いシーンを集めてぶち込んだだけ、という感覚が強い。サム・フラーの演出とクランクアップ後のスピーチなんかも大した見せ場だ。

 滝のある場所で、マリーとの濃厚な濡れ場があり、山道を行く神父(トーマス・ミリアン)と子供達が、その行為を見てしまう場面だとか、撮影隊が去った後、村人達が映画製作の真似事をし始めるシーンの緊張感(竹細工のカメラ機材と本当の暴力!)なんて部分も、図太いアイロニーが面白い。この辺りは、ホッパーらしいと思うし、こういう設定で、落ち着きのいいプロット展開も考えられると思うのだが、まったくそんな志向は持ち合わせていないのだ。旧友のドン・ゴードンや社長夫人のジュリー・アダムスらが登場し、娼館へ行き、レズビアンショーを見たり、はたまた、金鉱を掘りに行く旅に出たりと、混乱・散乱への志向性が勝ってしまう。しかし、これが真にクールだ、という確信も無さげなところが奥床しくもあり、歯痒くもある。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)ぽんしゅう[*] けにろん[*]

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