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[コメント] アナタハン(1953/日)

いやあ、ジョゼフ・フォン・スタンバーグという人は凄い人、かつ面白い人だと思う。こんなキワモノを日本人スタフ・キャストでミニマルに撮り上げた作品が遺作なのだ。しかも、全然手を抜いていない。力いっぱい作っていることがよく分かる。
ゑぎ

 例えば、スタンバーグ自身が担当するナレーションの質量(力強さ、多さ)からも本作への相当の入れ込み具合がうかがえる。また、画面の強さは、そりゃあ全盛期のディートリッヒ作品には劣るとは云え、まだまだ健在だし、密林の美術装置による奇怪な画面の造形は、例えば『恋のページェント』で見せた、宮廷内の退廃的で異様な造型を思い起こさせる(宮廷内の彫刻等とは全然違うとは云え)。スタンバーグはこういう閉塞空間が好きなのだろう。

 また、音楽は伊福部昭なのだ。彼を選んでいるというだけで「分かってる!」と思ってしまうのだが、これが、また、画面を盛り上げる音楽なのだ。

#備忘

・安里屋ユンタが度々唄われる。

根岸明美は2回、後姿のヌードがある。前半の風呂に入るシーン。こゝは後姿とは云え、乳房まで見える。もう一つは海辺で素っ裸の後姿。海へ入っていく。

・結局、米軍も日本軍(彼ら以外の日本軍)も登場しない。

#補遺

 スタンバーグの作品には1957年作『ジェット・パイロット』がありますが、この映画は1949年から1950年にかけて撮影され、1957年に公開されたものらしく、撮影順でいうと、『アナタハン』が遺作とのことです。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)袋のうさぎ

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