[コメント] 1917 命をかけた伝令(2019/英=米)
塹壕から野戦場へ出る場面の中尉が、酒をふりかけ、お祈りをする。この投げやりな感じがいい。ドイツ軍の、無人の塹壕の中で、ネズミがトラップに引っ掛かる。この瓦解と粉塵のカットでも、切っているだろう。
続く、見晴らしのいい高台の桜の林から廃屋と敵機の場面は、ロケーションがとてもいいと思ったが、唐突に味方の兵士が、思いの外、普通に登場する展開には首をかしげてしまう。
マーク・ストロング尉官の計らいで、トラックで送ってもらっていたのも束の間、トラックでは進めなくなるのも、恣意的過ぎる気がする。そして、一人小さな壊れた橋を渡っている際に狙撃され、このスナイパーとの対決シーンを挟んで、暗転して時間をジャンプし、夜になるのだから、もう詐欺にあった気分になった。
気を取り直して見進めると、実はこの後半はとても良いと思ったのだ。まずは照明弾の光に照らされた廃墟の町と炎上する建物のスペクタキュラー。これは大したもので、この夜の照明こそ、ロジャー・ディーキンスの成果ではないか。撮影のエッセンスの第一は、照明だ。カメラワークではないのだ。
フランス人女性と赤ん坊のシーンも、取ってつけたようではあるが緊迫感のある画面だし、川へのダイブ後のスピード感(こゝでもカットを割っているだろう)、森の中の歌声、白い塹壕、突撃する兵士達の物量、そしてベネディクト・カンバーバッチ佐官。ラストは草原のカットで、開巻と円環になる構成だ。常套過ぎるかも知れないが、落ち着きはいい。
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