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[コメント] コリーニ事件(2019/独)

主人公の弁護士ライネンが被害者ハンス・マイヤーの家族と関わった、子供時代、青年時代のフラッシュバックが多い。あるいは、被告人コリーニとハンス・マイヤーとの因縁を見せる、第二次大戦中のイタリアでの出来事は、コリーニの陳述として描写される。
ゑぎ

 このように、本作も、フラッシュバックを前提に作劇されている映画であり、またぞろ、ホークスの言「フラッシュバックを使わないと映画にできないのなら映画にしない方がいい」という言葉を思い出させる。

 映画として気に入ったのは、検察側(遺族側)公訴参加代理人の、法学者マッティンガー。この役者がカッコいい。あと、雨の中、自動車がエンコした際に、ライネンが立ち寄るピザ屋の佇まいが良かった。シオドマク『殺人者』の冒頭のダイナーを思い出した。こゝで出会うピザ配達員のイタリア系女性も、なかなか良いキャラだ。

 本作を見て弱いと感じるのは、かつて数多の戦争映画で、本作以上の残虐非道な人間の振る舞いが描かれ、我々はそれ見てきたわけで、本作の虐殺シーンを見ても、大してショックを受けないという、悲しき感受性麻痺にも原因があるだろう。しかし、もっと鮮やかな(ショッキングな、ということだが)見せ方もできたのではないか。また、かつての、刑法への条文追加の是非を、裁判劇としてのクライマックスに設定する、というのも何とも映画的じゃないのだ。

 尚、原作既読です。翻訳本発刊まもなく読みました。シーラッハでは、本作以前の短編集二作がとても面白かったので、本作も期待していましたが、当時の読書メモには「英米の冒険小説では、まゝあったネタ」と記しています。シーラッハなら、短編をふくらました映画化が見てみたいと思います。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)動物園のクマ[*] けにろん[*]

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