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[コメント] レイニーデイ・イン・ニューヨーク(2019/米)

ビング・クロスビーで始まり、コール・ポーターエロール・ガーナーで締められる。また、ティモシー・シャラメによる「Everything Happen to Me」のピアノの弾き語りがとてもいい。全体、シャラメが主人公だが、しかしエル・ファニングの良さが際立った映画だ。
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 実は、ヴィットリオ・ストラーロの撮影は、個々のカットはとても綺麗だが、全体のルックの制御は、イマイチじゃないかと思った。最初のカレッジのシーンは、ずっと斜光で、夕景としか思えない光の扱い。NYの場面も、到着直後のホテルの部屋から、リーヴ・シュレイバーへのインタビューのシーンにかけて、やはり、夕方としか思えないオレンジの光だが、科白から、午前中だったと分かる。ちょっとこれには首をかしげる。また、車中で雨が降り出すあたりは、『女と男の観覧車』の、日照り雨のような画面造型を、斜光の中でやるのか、とかなり期待したのだが、しない。雨のシーンは全般にルックが不統一で、時間の感覚が、よく分からなくなる。ただ、車のフロントガラスに強く雨が当たる中で、会話する人物のカットはいい。

 ラスト近くのセントラル・パークの馬車のシーン。シャラメが何かの詩の一節をつぶやく。すると、ファニングは「シェイクスピア」と答えるが、これは、「Night and Day」の歌詞の一部なのだ。ファニングは、結局アホとして描かれている訳だが、ディエゴ・ルナの部屋でのシーン含めて、本当にアホを見事に演じており、感動的だ。セレーナ・ゴメスも悪くないが、女優としての仕事ぶりとしては、断然ファニングを買う。

 エンディングの、セントラル・パークのデラコルテ音楽時計のシーン。これぞ予定調和だが、このご都合主義こそ映画だ、という感慨を覚える、映画らしい良い終わり方だ。中盤でもBGMとして使われていた「Misty」が、こゝでも流れる。やっぱり、ウディ・アレン映画はNYに合っている。本作はアレン最良作の一つだろう。

(評価:★4)

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