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[コメント] 水曜日が消えた(2020/日)

なかなかの佳作。火曜日(役名)・中村倫也の映画であると共に、一ノ瀬・石橋菜津美の映画だ。火曜日が図書館で、瑞野さん・深川麻衣を誘うのを見る、階上の一ノ瀬。こゝで、彼女の見た目の俯瞰カットがある。この時点で既にこの映画は一ノ瀬の映画でもあると気づく。
ゑぎ

 道路に飛散するガラスの破片、花弁や紙切れ。転がったサイドミラー。ひび割れた鏡に写ったカモメが分身するイメージ。この事故場面のフラッシュバックが火曜日の起床前に何度も挿入されるのは、だんだんと鬱陶しくなってくる。全体、かなり込み入ったプロット構成を持つ映画で、それを上手く整理して見せていると思うのだが、屋内の監視カメラ映像は不要だと思った。これは惜しいところ。また、火曜日が月曜日とスマホでビデオ通話的?なやりとりをするシーンは、見ている際は首肯し難かったが、しかし、映画的な見せ場であることも確かなので良しとしよう。

 ほとんど5、6人の登場人物しか出ないミニマルな構成。なのにプロット展開には、とても豊かさを感じる。矢張り一ノ瀬のキャラクター造型と、火曜日との関係性が効いているのだが、主治医のきたろうも相変わらず素晴らしい。この人は、現在の日本映画に不可欠の人となったという感懐を覚えた。

 あと、前半の火曜日の起床時に、ベッドに他人が寝ている状況を反復するが、この見せ方は上手い。これに近い演出として、病院の助手・中島歩がデスクの下から登場するという、隠蔽から暴露への演出もある。「隠す」というのは、本作全体を象徴するテーマでもある。

(評価:★4)

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