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[コメント] スパイの妻(2020/日)

いつもに増して逆光の取り入れが目立つと思った(近作では、『予兆』も多いが)。東出昌大高橋一生の会社を訪ねて来たシーンの窓の光。蒼井優が憲兵隊部隊に呼ばれた後、街頭を歩く仰角カットも逆光の中。高橋と蒼井が乗った市電の車中も、逆光。
ゑぎ

**ネタバレ注意**
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 窓外の光を和らげる白いカーテンは、本作では見られない。強い風もだ。対比するように闇が怖いシーンは際立っている。倉庫、誰もいない事務所、フィルム缶を隠す廃墟、船底、病院、プライベート・フィルムの上映会。本作の映画中映画は、ちょっとこれに比肩する使われ方をする作品を他に思いつかないほどだと思う。劇伴のジェローム・カーン「Make Believe」もいい。

 蒼井が有馬温泉で坂東龍汰から受け取って来た英訳された資料を、高橋に渡す倉庫の場面。高橋は、あれほど秘密にしていた満州での事の次第を案外簡単に明かしてしまう。さらに、蒼井が開け方を知っている金庫に資料を隠す。これには違和感があったのだが、この時点から、蒼井の思考と行動を予見し織り込んで作戦を立てていたということだろうか。もう少し明確に描いてもいいのにな、と思った。それにしても、船底から部隊に連行された蒼井が、フィルム上映前に「ご覧ください」と云う、外連味たっぷりの演出はいい。お見事。

 エンディングの演出、空襲後の病院の外の状態を見せず、蒼井の顔アップで示して、次に、浜辺を一人走るカットが来る。これって寂しい。日本映画らしい寂しさ。こゝは流石にモブシーンがあったらいいのにと思う。これで暗転したので、すっかりテンションが下がったのだが、暗転後の、二人の戦後を記した字幕は、ある種のハッピーエンディングであることを示唆しており、ちょっとホッとした。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)ぽんしゅう[*]

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