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[コメント] 聖なる犯罪者(2019/ポーランド=仏)

草原の中のバス停。俯瞰で見渡せる製材所。その他、主な舞台となる村の風景描写なども、それなりに美しいが、教会と他の建物や装置の関係(立地など)も含めて、空間を上手く見せる気はあまりないように思う。
ゑぎ

 そういう意味でも、ほとんど、主人公のダニエル、バルトシュ・ビィエレニアのキャラ造型に拠っている、あるいは専念している映画だと思った。それだけに、この主人公の造型は、全くもって突出している。クラブでの目ん玉むき出しカット、聖水を放り投げたり、上体を激しく動かす、あるいは後ろへ反らすダンスなど、彼の身体性がとても魅力的に描写されている。また、祈りの言葉や説教についても、やぶれかぶれのように即興で発した彼自身の言葉が、それなりに時宜を得ており、人々に受容され、徐々に感動を与える、その描写に我々観客も感動する。そして、彼の正体がバレるスリルだけでなく、過去の自動車事故の顛末と後始末へ固執する姿が描かれるのも、プロットを重厚なものにしている。彼を「聖なる」存在と見せかける演出が周到に仕掛けられている。ただし、逆に云うと、正体がバレるスリルの描写については、甘いと感じる。

 実は、ラストシーンは全く反対の帰結を想像していたのだが、矢張り、この終わり方が今日的なのだろうとは思う。ラストカットはインパクトがある。しかし、村の教会における二人の女性の場面とクロスカッティングする繋ぎは弱いと私は思う。教会内のシーンを先に終わらせて、続いてラストシーンをじっくり見せる、(できればシーケンスショットで)という風にシリアルに繋いだ方が、衝撃があったんじゃないだろうか。クロスカッティングの使い過ぎも、今日的な映画作法の無粋な特徴ではないか。

#R-18+のレイティングは、映倫のサイトで検索すると、極めて刺激の強い性愛描写がみられる、とのことだが、2シーンしかない性愛描写の中でも最初の数秒のワンカットだけでの判断ということか。勿体ない。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)けにろん[*] jollyjoker[*]

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