[コメント] モンタナの目撃者(2021/米)
2人がビジネスライクに気遣い合っている関係性や、余計な描写をせず(例えば、私生活は一切描かないが)、ちゃんと性格付けが明確な点がいい。勿論、妥協を許さない非情さも。ハリウッドの犯罪映画の伝統、例えば『殺人者』(1946)の冒頭の二人の殺し屋(ウィリアム・コンラッドとチャールズ・マックグロー)なんかの系譜だと思わせる。
主人公側では、コナー少年、フィン・リトルもよくやっているが、やっぱり、アンジェリーナ・ジョリーのスターとしての扱いが周到だ。道路で走るトラックからパラシュート降下する、というようなよく分からない見せ場もあり、これだって私は良いと思うが、なんといっても、ジョリーは、どんどん痛めつけられ、傷だらけになる、という扱いがいい。まずは、塔への落雷を避けて、ロープから地面に叩きつけられ、手に怪我。草原の落雷シーンでは、ほとんど直撃。そして終盤、殺し屋ニコラス・ホルトとの対決では、しこたま殴られるのだ。ちなみに、シンクロするように、もう一人の殺し屋アイダン・ギレンも、どんどん痛めつけられるのが楽しい。
また、こゝでも戦場の妊婦のモチーフが描かれるのだ。普通に考えると、彼女の活躍が、本作の一番良い点だろう。火かき棒で脅される場面からの銃撃戦。馬の使い方。マシンガンと鹿撃ち銃での装弾競争。
さらに、画面造型上の美点を上げておきたい。この点での一番は、まずは、まるで雪のように灰が降ってくる画面のスペクタキュラー。そして燃え広がる炎の早さの表現だ。ラストカットの、山並みの方へ飛ぶヘリ数機のロングショットもとても落ち着きのある良いカットでした。全体に、細かな瑕疵は指摘できるとは思うけれど、テイラー・シェリダンの監督作としては、私は前作『ウインド・リバー』より上に置く。犯罪映画の佳作と思う。
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