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[コメント] 死刑にいたる病(2022/日)

川の水面下から撮ったカット。花びらみたいなものが降ってくる。川岸から、花びらみたいなものを撒く阿部サダヲ。小さなダムの水門を開ける。阿部が撒いていたものは花びらではなく、爪だと分かる。赤く染まっているものがある。
ゑぎ

 続いて斎場。棺が火葬炉に入れられる。中山美穂鈴木卓爾岡田健史が手を合わせている。葬式に中山美穂って、よく似合うと思ってしまう。本作も、なかなか雰囲気のある良い出だしだと思う。ちなみに、本作は手の指と爪の映画だ。

 また、人から決定を委ねられる、というモチーフが反復される。その最初が、中山がビールの追加注文の決定を岡田に委ねる場面だが、その後、阿部から、冤罪案件の調査、再度中山から遺品を捨てていいかどうか、あるいは、幼い兄弟に、どちらを傷つけるのか、など。多分、原作だと、この反復がもっと効果的な使われ方をしているのだろうな、と思いながら見た(勝手な想像)。本映画化ではイマイチか。

 ただし本作は、細かな映画的な技巧が上手く決まっていて見応えのある部分が多くある。ちょっと例を上げておこう。例えば、岡田が大学構内を歩く横移動の背景がスローである、という不思議なカット。歩く岡田は普通のスピードなのにその後景で階段を上がる学生やダンスする女子学生の動きなどはスローなのだ。岡田が大学に馴染めていない、ということを表出する。他にも、阿部と岩田剛典の陸橋でのシーン。阿部が岩田に近づく動きは、台車のようなものに、カメラと一緒に乗っているみたいだった。これにより、阿部が支配する感覚を強化する。あるいは、これは多くの観客が思うところだろうが、接見室のアクリル板が、自由自在に操作される演出は面白い部分だろう。手の指が貫通したり、プロジェクションマッピングのように情報が投影されたり。それと、20代の阿部と中山は、ポストプロダクションの修正の結果だろうか。阿部の眼球もそうだろうか。

 尚、岩田は、酷い役だと思う。ルックスのことではなく、思わせぶりなだけで、ほとんど機能しない役割であることを指している。あと、岡田の同級生役の宮崎優は、美味しい役じゃないか。『うみべの女の子』でも、しっかり記憶に残る存在感だったが、今後も推していきたいと思わせる女優だ。彼女の「手の指と爪」モチーフへの貢献度は高い。もっとも、ラストは余計だと思うが(それは作劇の問題として)。

#傷つけ合う幼い兄弟の弟は川原瑛都くんだ。最近テレビドラマでも見るが、彼は、Eテレ「にほんごであそぼ」のスター。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (3 人)MSRkb ぽんしゅう[*] けにろん[*]

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