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[コメント] ブロンドの殺人者(1943/米)

このディック・パウエルのマーロウ、なかなかいいじゃないですか。ロバート・モンゴメリーのように偉そうではなく、飄々とした感もありながら、頼りがいもある。後のミッチャムには及ばないかもしれないが、グールドとはいい勝負じゃないでしょうか。
ゑぎ

 さて、警察署の尋問机の俯瞰から始まり、マーロウへの尋問〜回想という出だしもなかなかコギミよく快調な演出だ。ハードボイルド探偵モノなので、お話は分かりづらいのだが、そんなことはどうでもよろしい。画面の感度で特徴的なのは、夜の戸外の濃霧、クラブのシーンで強い光に照らされたタバコの煙、麻薬漬けにされたマーロウの、視覚異常におちいった見た目(蜘蛛の巣のようと形容される)だとか、要は画面に靄のような、紗のようなものを意図的にかけた演出だ。あるいは、映画中で5〜6人は殺されるのだが、ほぼ死体は画面外で処理されるという演出は特徴的だ。少なくとも、一人も死に顔は映されない。例えば、銃を撃つ人の画面を映しても、撃たれた側は、その瞬間のカットもなければ、倒れた後のカットもない、しかし、殺された、ということが自明である、といった演出なのだ。なんの拘りかよく分からないのだが、しかし、エドワード・ドミトリクが拘った演出なのだろう。シーンの白眉だと、矢張りクライマックス、海の側に立つ家の場面だろう。ローキーの画面が良く、大きな窓の向こうに夜の海が終始きらきらとしている造型が美しい。

 脇役だと、大鹿マロイを演じるマイク・マズルキが、でかくて強くてよく目立つ。悪の黒幕はオットー・クルーガーだが、この人がもう少し怖い造型であれば全然違ったろうと思わせる。運命の女はクレア・トレヴァーで、『駅馬車』から4年後ぐらいだが、登場シーンでの脚の披露といい、よく頑張っている。もう一人のヒロイン、アン・シャーリーの扱いが、映画のムードをハードボイルドから遠ざけてしまった感はあるが、仕方がない。これが当時のハリウッドの常套だったのだろう。シャーリー自体はとても可愛い。

#原作は 「さらば愛しき女よ FAREWELL, MY LOVELY」

(評価:★3)

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