コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] グラマ島の誘惑(1959/日)

「アナタハン島事件」に着想を得た戯曲の映画化、川島雄三のブラック喜劇だ。島の朝、森繁久彌フランキー堺が起きる場面から始まる。二人は皇族の兄弟。森繁の好色と、やんごとない台詞回しが笑わせる。戦前戦中なら不敬罪じゃないか。
ゑぎ

 桂小金治が、お付武官で、この人も最初は慰安婦・轟夕起子と一緒に暮らし、その後、報道班員・淡路恵子と暮らすという、いい加減な軍人だ。現実のアナタハン島では、32人の男と1人の女、という状況だったらしいが、本グラマ島の方は、4人の男と10人ぐらいの女という構成で劇化されている。

 スタンバーグの『アナタハン』でも劇中「安里屋ユンタ」が盛んに唄われたが、本作でも慰安婦・宮城まり子が唄う。宮城の他に、慰安婦では轟、桜京美春川ますみ等がおり、あと報道班員として淡路と岸田今日子、そして、民間人の八千草薫がいるのだが、森繁と結ばれる宮城が本作のヒロイン、と云っていいだろう。

 ちなみに、ワタクシは当然として、主に八千草を目当てに見たのだが、本作の彼女も勿論綺麗だが、見せ場はほとんどなく、かなりがっかりした。フランキーと原住民役の三橋達也で取りあう、という美味しそうな役なのにだ。八千草をめぐる演出に関しては、三橋のドタバタ含めて(よく動くが)、減点だ。

 終盤は、グラマ島の後日譚で、日本へ帰還した後のシーケンスが結構長い。そういう意味で、映画全体のバランスも悪い感覚を持つが、しかし、終盤も見応えはある。天皇制や沖縄返還問題への示唆という部分。当時の皇太子婚礼の写真の扱い、そして、ドクター・ストレンジラブのようなエンディング。やはり、川島、画面は「見応え」がある。

#ラスト前に、二役目の森繁が登場するが、日比谷の映画館の前で、『熱いトタン屋根の猫』と『無分別』の看板・ポスターが見える。

(評価:★3)

投票

このコメントを気に入った人達 (0 人)投票はまだありません

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。