[コメント] 幸福〈しあわせ〉(1965/仏)
凄い凄い、こんな凄い映画だとは思っていなかった。カメラワークにしても、カッティングにしても、圧倒的な、強烈な、自由さを持った演出の連続で、楽しくて楽しくて仕方がなくなる。そして同時に、冒頭から、恐るべき傑作であるという、揺るぎない確信を持って見続けることができる。
しかしそれにしても、ラスト近くのピクニックの場面で、夫が妻に告白するシーンは、映画史上最強のシーケンス・ショット(の一つ)だと思える。人類史上最高のコンビである溝口+宮川のシーケンス・ショットと見紛うような、鬼気迫る、映画の神が宿ったとしか思えない、幽玄な質感が定着している。
他にも、前半から繰り返されるピクニックシーンの緩やかに漂うカメラワークや、ウェディングドレスの仮縫いの場面の幸福感溢れる描写や、白いシーツに包まれたベッドシーンの長回し等、もう麻薬的な美しさを持った素晴らしいシーンは数えきれないぐらいある。エピローグの秋の森の色遣いとカメラの眼差しの非情さ、厳しさにもしびれる。あゝ凄いものを見た、という感覚を強くする。
#備忘。前半のピクニック場面の後の屋内シーンで、テレビに映っている映画は、ルノワールの『草の上の昼食』。あと、映画を見に行く、という会話の中で、「西部劇。でも活劇じゃない。バルドーとモローの初共演」という科白がある。『ビバ!マリア』のことだ。
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