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[コメント] 浪花の恋の物語(1959/日)

この映画の一番の見所は何と云っても坪井誠の流麗なカメラワークだろう。廓の中を緩やかにそして自由自在に移動する。
ゑぎ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 フィクスでも広い中庭を利用したロングショットの俯瞰仰角が素晴らしい。竹本座の客席から舞台で演じられている人形浄瑠璃まで後退する大移動カットも見事なものだ。内田吐夢の厳格な演出と相まって非常に格調高い作品に仕上がっている。

 しかしそれでもこの映画が成功してると思えない要因はヒロイン梅川を演じる有馬稲子の弱さだ。悲劇のヒロインとしてラストまでこの映画を支えきるには性格描写が曖昧過ぎると云っても良い。例えば中村錦之介とこれ程までに惹かれ合う納得性が弱い。寝間での描写が全くすっ飛ばされているのは当時としては仕方が無いのかも知れないし、ある意味格調高さに繋がっているのだが遊郭の女としての魅力に欠ける。ただし、ラスト近くで近松門左衛門のイメージとして提示される舞う有馬稲子から人形浄瑠璃への転換なんかはドキドキする演出だ。内田吐夢は最初から人形のような感情の曖昧な女として一貫して彼女を演出しているのかも知れない。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (3 人)けにろん[*] Aさの[*] ぽんしゅう[*]

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