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[コメント] 東京ジョー(1949/米)

フローレンス・マーリーアレクサンダー・ノックスの役回りはイングリッド・バーグマンポール・ヘンリードだし「These Foolish Things」が思い出の曲として使われるという部分も含めて真剣に『カサブランカ』の焼き直しをやるのかとも思ったがそうでもなく、小ぢんまりとしたフィルムノワールの様相を呈してくる。
ゑぎ

 しかし全体として結構かっちり作られている。富士山の美しい空撮をバックにタイトルが出るオープニング。その後のクレジット中の空撮も飛行機の着陸する感じがよく出ており、この冒頭から引き付けられるものがある。またハンフリー・ボガートとそのスタンドイン(代役)との繋ぎが上手い。東京ロケはスタンドインのみが演じており、ボガートの顔が映るカットは全てスクリーンプロセスだ。この処理はプリプロダクションにおける設計が非常にきめ細かく出来ていた成果だ。或いは「東京ヂヨー」店内でテル・シマダという役者と柔道をするシーンも見事にボガート本人が柔道の技をかけているように見える。そして何と云ってもボガートの日本語の台詞が案外多いのが嬉しい。

 お話の上澄みをすくえば少々プロパガンダ的要素が散見される。早川雪洲演じる木村男爵は旧秘密警察(特高?)のトップで、旧体制=悪の象徴として描かれており、一方、米軍の進駐によって日本の庶民は助けられているのだという主張が描かれる。また前半で提示された「東京ローズ」にまつわるシチュエーションがプロットを転がすテコの役割を担うのかと思ったが、単なる状況設定に止まり、日米どちらの側においても戦争の悲劇を描く気はないようだ。

(評価:★3)

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