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[コメント] らせん階段(1946/米)

冒頭シーン。ホテルで無声映画の上映会が行われており、一見してD・W・グリフィスだと分かる。(IMDbで調べると『The Sands of Dee』という映画。)その後、ホテルの階上の部屋で足を引きずる女へディゾルブするのだが、もうこの処理だけでゾクゾクしてしまう。
ゑぎ

 殺害シーンの造型も秀逸。男の目。瞳孔までエクストリーム・クローズアップする。くだんの無声映画を見ていたヒロイン、ドロシー・マクガイアは唖者だが心因性の失声症であり、この設定がラストまでプロットに力を与える。前半すぐに彼女が女中として働いている町はずれの屋敷に舞台が移り、ラストまでカメラはこの屋敷を出ない。本作も、もう殆ど屋敷が主人公と云える映画だ。やたらと人物が出入りし、また人物の関係性もなかなか複雑だが、よく整理して見せる。見事にさばいている。本格推理のような趣もある点は、ちょっと作り物臭いのだが、実にスペクタキュラーな見せ方が続く。タイトルのらせん階段はこの屋敷の階段で、2階から1階、地下倉庫と続いている。地下の酒蔵、ブランデー、蝋燭といった道具立ても含め、映画らしいドキドキ感が息づいている。クライマックスでは、マクガイアはランプを窓に叩き付けたりして驚かしてくれるのだ。尚、陰鬱な場面も多い映画だが、一方、マクガイアが随所で屈託のない可愛い笑顔を見せるので救われる思いがする。このあたりのバランスもいい。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)寒山拾得[*] 袋のうさぎ

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