[コメント] ならず者(1943/米)
チャイコフスキーの交響曲第6番「悲愴」第一楽章の中の甘いメロディがタイトルバック。このフレーズが劇中何度も繰り返される。多分、ハワード・ヒューズの注文だったのだろうが、意外にも、これが雄大な西部の風景に合っている。
しかし、本作の最も酷いところは、「悲愴」以外の劇伴の音楽だろう。まるで「トムとジェリー」等のカートゥーンのような説明的コメディ音楽なのだ。ヴィクター・ヤングも従わざるを得なかったのだろうか。(カートゥーンの劇伴を低く見ているわけではありません。)
さて、グレッグ・トーランドの刻印と云えるような部分もイマイチよく分からない。ジャック・ビューテルを看病するジェーン・ラッセルのシークエンスで、ベッドにいるビューテルと、ドアの向こうのラッセルを縦構図で収めたカット等、かなり被写界深度の深いカットはある。ただし、こういうカットが何かの役に立っているとも思えない。また、このシークエンスの中のシーン繋ぎで、ドアだけを映したちょっと長すぎる空ショットなんかもあり、編集者の仕事も違和感がある。という風に、欠点をあげつらうと色々あるけれども、ウォルター・ヒューストン、トーマス・ミッチェルという名優2人の存在感と、ビューテル、ラッセルの初々しさ、さらに、ヒューズの無邪気なほどに映画を玩具化する喜びも伝わってきて、十分に楽しめる西部劇ではある。
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