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[コメント] 殺しが静かにやって来る(1968/仏=伊)

圧倒的な雪の西部劇。これ程までの雪の西部劇はちょっと思いつかない。『ギャンブラー』や『無法の拳銃』、『大いなる勇者』をさえ凌駕するのではないか。それは『続・荒野の用心棒』が泥濘の西部劇として他を寄せつけないのと同じように、映画史に残る雪の質量を目指した意志の力を感じさせる。
ゑぎ

 ただし、撮影は難しい局面が多かったのか、ルック、露光の統一はいい加減です。雪の降らせ方も継続する時間の中でカットが変わると違っていたりする。しかし、そんなことはもうどうでもよい、と思わせられるのだ。

 アバンタイトルは雪原の右上に小さくロングで近づいてくる乗馬。まるでアンゲロプロスのような長回しの待ちボジ画面。本作の主人公、唖者のガンマンを演じるジャン=ルイ・トランティニャンはカッコいい。現代劇の時の彼とは見違えるくらいに美形に描かれている。登場人物も、複数の賞金稼ぎ、保安官、野盗たちが入り乱れて重層的なプロット構成だ。少々整理し切れていないと思う部分もあるが、一筋縄ではいかない複雑さが面白い。ヒロイン・ヴォネッタ・マギーとトランティニャンのラブシーンもよく描かれている。そして後半はトランティニャンが目立たず、賞金稼ぎの一人、クラウス・キンスキーが矢鱈目立つ、と思っていたら、結局彼がひとりで映画をかっさらってしまうのだ。このような図太さもちょっと比肩する他の映画を思いつかない。

(評価:★4)

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